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番外編  友釣りの税金

こんなくだらないエッセイへは、女性がアクセスなどしてないと信じて・・・特に娘なぞ・・・ブツ、ブツ、ブツ。
・・・・・まっ、そろそろ時効だからいいか。
[平成15年2月14日]


友釣師のなかにはこういう経験をしたことがある人がいるのかも知れないが、私とっては初めてのことで、 とまどってしまった。
実はこれを書いている今も、ズキズキッ、シクシクッと痛んでいて、どうにも我慢が できないのだ。
でも、治療が難しい。
[平成13年7月30日]

実は4〜5日前の晩、古い釣り友達から電話があり、神通川で釣りをしていて足の親指の生爪を 剥がしてしまった、との内容だった。
私は即座に、
「軟弱者め、それくらい何んだ、死にゃせん!」
と鼻の先でセセラ笑った返答をしておいた。
自分の痛さは我慢できないが、他人の痛さはどれだけでも我慢ができる。
おおよそ、友釣りをしている者にカブレ、あせもを含んでケガをした事が無いという人は少ないのでは なかろうか。私も足の爪の剥がれは勿論、打ち身、捻挫、あげくの果ては友釣りのやりすぎから来る腰痛 とありとあらゆるものを経験した。
これは暑いさなか、不安定な河原や流れの中を歩き回るためにおこる、友釣りの税金みたいなものだ。 しかし、今度の税金には参った。

これは平成13年7月28日の出来事だ。
この日も朝から暑く、9時頃に手取川の山ノ庄に着いたが、土曜日とあって沢山の釣り人だ。
先に入川 していた亘さんを見つけて、オトリを借りて釣り始めた。
川は減水ぎみで、めぼしいポイントは ほとんど攻められていて、どうも追いが良くない。 ここのところ瀬が好調なのを皆よく知っていて、たいがいの瀬は大入り満員だ。中にはずっと瀬でルアー 釣りをしている者までいる。
しょうがないので、分流でチビ鮎を釣って午前中は過ごした。 これでは欲求不満がつのる。瀬の鮎のガガーン、ギュウーンといった感触が恋しい。

そこで、午後より場所替えを提案して、川北大橋の下流の高圧線の下に移動した。ここは高圧線の真下 が非常に早い瀬になっており、その上流に長いトロ瀬がある。
瀬のスペシャリストの亘さんは高圧線の真下へスッ飛んで行ってしまった。
瀬が釣りたいと場所替えをしたのに、私はトロ場で立て竿のなまくらな釣りを選んだ。理由は簡単だ、 たまたま目の前のその場所が空いたからだ。瀬まで歩くのが面倒臭かったのもある。
ここではポツリ、ポツリの状況だったが、どうせ亘さんも人のやりカスの瀬だから似たようなものだろ う、とタカをくくっていた。
私が30尾目を釣った夕方5時頃に、彼が上がって来たので釣果を聞く。
「どうだった?」
「うん、入れ掛かりだったよ、52尾。」
内心、”しまった!”と思った。午前中は同数なので、午後から実に22尾も差を開けられたことに なる。亘さんは好敵手だけに、これはまずい。
「そっちは?」
の問い返しには、後ろを向いて立小便をしながら、聞こえないふりをする。
あとから考えるとこれが悪かった。
「もう止めるんだろう?」と亘さんがまた問う。
「ウ〜ン、俺はもうちょっとだけ・・・。」と答えながら、気持ちは高圧線の下に行っている。  なにせ鮎釣り師は入れ掛かりと言う言葉に弱い。

周りの釣り人はもうほとんど上がって誰もいないのに、負けず嫌いな私は一人で高圧線の下にスッ飛 んだ。
ところが途中で、小便後のムスコの納まりが悪いのに気が付いた。 私はカブレ防止に、いつも鮎タイツの下にアンダータイツとして男性用下着のパッチを履いている。 このパッチのムスコを取り出す口から、頭だけ出ているようなのだ。
簡単に言えばムスコの首吊り状態 なのだ。
あせって小便を終わらせたので、どうもきちんと仕舞わなかったようだ。
でも、”上にタイツを履いているので外からは見えないからかまやしない”と、いいかげんな性格 丸出しで、瀬に飛び込んだ。

流芯は攻められていると踏んで、逆に流芯に立ち込み両岸のかけ上がりを攻めたのが効をそうして 入れ掛かりだ。
ところが、5尾連続に抜いた頃から下半身にどうも違和感が出て来た。流れに足を踏ん張って いるとヒリヒリ、掛かって抜く時にヒリヒリといった按配だ。
しかし夕方のゴールデンタイムは短く、そんな事にかまってられない。1時間ほどの間、良型を 抜き続けたが、15尾目でタモの中で仕掛けが絡んだので心を残して竿を納めた。
本音は亘さんより 1尾多い、53尾まで釣り続ける気だったが・・・。

遅い時刻なので、タイツ姿のまま帰りの車を運転していたが、下半身の痛さがどうにも我慢が出来ない。 やっとのことで家にたどり着くと、風呂場へ直行してタイツを脱いでムスコを点検する。
見た瞬間、
「ウア〜ッ!」と声を張り上げてしまった。
赤くタダレてハレ上がり、もともとそんな立派でもない松茸が、まるで腐ったサツマ芋のようになってるではないか!
シャワーのお湯が当っても痛くて飛び上がるほどだ。

シャワーを終わえて、女房に泣きついた。
「頼む、何とか治療をしてくれ。」
女房は私の一物を見て、
「クックックッ・・・。」
この押し殺した笑い声が気に入らない。
「そんなになるまで鮎釣りがしたいの〜、アホか〜!自分で始末しなさい。」
と冷たい返事しか帰ってこない。
これはエッセイ5の鮎釣り大会に勝てない理由で、女房をネタにしたシッペ返しに決まっている。江戸の敵を長崎 で討っているのだ。
これでは自力で治療するしか手は無い。

まず、薬箱をひっくり返す。オロナイン軟膏が出て来た。効用を読むと、打ち身、擦り傷と書いてある。 これを局部に塗り込むことにする。
ところが勃起していれば簡単なのだろうが、腐った種芋状態では フニャ、フニャして塗りにくいたらありゃしない。
力を入れれば痛い、入れなければ塗り込めない。
悪戦苦闘の末、何とか終わらせてホッとする。
この時、テレビのコマーシャルでオロナインC軟膏の宣伝を している可愛い娘の顔がフッと浮かんできた。まさかあの娘はこんな所に塗られているとは想像もし ないだろうな〜、と愚にもつかないことをフッと考えている。
この時、
「窓を閉めてしてよー、恥ずかしい!。」
と女房の鋭い声。
そりゃそうだ。こんなものを隣人に見られたらこちらも恥ずかしいが、向こうも迷惑至極にちがいない。
パンツに擦れると痛いので、ゴムヒモを引っ張って窓を閉めに行く。 この時に気が付いた!。明日、1日中、 パンツのゴムヒモを引っ張って歩くわけにはいかない事を・・・。

そこで女房に包帯は無いかとたずねると、いくつかの使用済みのものを押し入れから出してきて くれた。それを自分の前に並べて、目を行ったり来たりさせている。どうも一番汚い包帯を捜してい るようなのだ。私が一番手前のものを取ろうとすると、その手を振り払い、別の何度も使用したような 包帯を投げてよこした。
こっちは逆らう気力も無く、それを受け取り、局部に巻こうと試みる。
ところがこれが軟膏を塗るよりも難しい。
嘘だと思うなら自分で試してみて下さい。痛さで垂れ下がっ たムスコを左手で引っ張り、右手一本で包帯を巻くという事は至難の技なのです。
やっとの事で何とか巻き終わえると、痛みは少し柔いだ。パンツに擦れるヒリヒリが無いのがいい。

しかしこの後、どうやって鮎釣りをしたら良いのだろう。
濡れれば必ず悪化するだろうし、 休日に鮎釣りをせずに家にいるのも耐えがたい。
女房に粗大ゴミ扱いされるのも不本意だ。
それよりも何よりも、このことが鮎仲間に知れたら、口がさのない連中なので、何を言われるか知れたものじゃない。 まず同情はないだろうから・・・、ひた隠しにしておこう。

ところが晩酌の酒に酔って、何人かに自分からバラしてしまった。
案の定、同情なぞ全くなかった。
亘(敬称がないのは当たり前)にいたっては、
「エッ!、大変でしたね、クッ、クッ、クッ・・・。」
と、電話の向こうでの押し殺した声が気に入らぬ。

この噂がいっきに広がり、オカマ鮎師のように腰を引いて釣る私の姿を見ようと、 釣りのお誘いが多くなったのには、何をか言わんだ。
少し治癒しかけた頃に川へ入るものだから、いつになっても全快しない。
ぶらさがってない方がまだましなようでは、情けない。
そうゆうわけで、この年は早々と鮎釣りをリタイヤしてしまった。

チッキショー、こんな税金は村田 満名人から徴収してくれー。
俺はまだ税金をはらうほど、鮎を釣っていないぞー。
 

−鮎三昧−
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