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7 月 鮎釣り大会に勝てない理由

毎年、各鮎釣大会にはよく出場する。
恥をかくような成績でもなければ、上位入賞するような好成績でもない。
なまくら四つ釣法同様、なまくら四つ成績だ。
だが、出場申し込みをした大会では一度も欠席がない。  大会主催者側から見れば、枯れ木も山の賑わいと言ったところだろう。
家族などは、私が大会に行くことを、帽子のコレクションに行くと陰で言っている。

各大会ごとに、メーカーが帽子を支給する。 一般の釣り人もエリアに混じることがあるので、 区別する為なのだ。
だから大会から帰っても、女房などは成績も聞いてくれずに、
「今日の帽子は何色?近所の何々君にあげるわよ。きっと喜ぶわ−。」
となる。

 ところが、大会成績はたいした実績は無いが、最後のお楽しみ抽選会には 滅法強く、今までに、テレビ、オトリ缶、オーブントースター、車のシートカバー、 錨ケース等もらった物は数しれない。
釣友には、「鮎釣りは迷人だが、抽選会は名人だ。」とやっかまれている。
でも、たまには予選決勝で上位に残ることもある。
某大会での予選決勝4位の賞品のクーラーも、家族内ではお楽しみ抽選会 の景品にされてしまっているほどだ。

 ご存知のように大会には、予選と次の決勝があり、そこで勝ちあがって始 めて全国大会に行ける。  私クラスの実力では、とてもそこまでは行けない。予選通過がひとつの目標 なのだ。
ただ、数多く出場するので、年に1〜2度は予選の決勝までは進むことがある。
ところが、D社のマスターズだけはどうもいけない。
予選通過すらできないのだ。数年間、通過尾数に”1尾足りず”が続いた。

 例のごとく釣友は「この大会はレベルが高いからな〜。」
と、暗にオマエがヘタなだけだとからかう。
私も変に納得していたが、良く考えてみれば北陸の予選はどの大会も、出てくるメンバーに大差はない。
大体が前の大会で顔を合わせており、次の大会では、
「お互いに好きですネェ〜、ご苦労様。」
が挨拶になっているではないか。
メンバーにそう変わりはないのに、この大会だけなぜ予選が通過できない?
なぜ俺のコレクションに白の帽子が加わらないのだ?
と、自分の実力を棚にあげて考え込んだ時期があった。

 そんな折にある雑誌での記事が目にとまった。
そこには、”妙齢の女性の陰毛は幸運を呼ぶ。サイフに入れておけばお金
を呼び、道具に付けておけば上手になる。”と、書いてあるではないか!

 かくして、その日から神頼みならず、陰毛頼みに走ることになってしまった。
しかし、おいそれと妙齢の女性の陰毛なぞ手に入るわけがない。
娘は小学生低学年では期待できない、まして女房のものでは川でこけて ケガしそうだ。

 それから女性の顔を見るたびに、
「頼む、一本くれ−。」、
「たくさん有るだろう。1本ぐらい、いいがいやー(訳:良いだろう:金沢弁)。」
の恥ずかしい日常が始まった。
変態のレッテルを貼られようとも、若い女性に会う度に言い続けた。
そのうち、鮎釣り大会に勝ちたいのか、単なるスケベなのか自分でもわから なくなってしまったほどだ。

もちろん、女房の知り合いの娘に頼み込むのも再三だ。
それに閉口して、愛想をつかした女房が、
「恥ずかしったらありゃしない。美由紀さんに貰ってあげるから、もう止してちょうだいよ!」
美由紀ちゃんは近所で評判の器量よしではないか。
よしっ、これで今年の大会は楽勝だ−!

大会前日に、女房から渡された1本のちぢれ毛を後生大事に愛竿の尻栓の 裏にセロハンテープで止めながら、
”女房の目がなければ、ちよっと臭いをかいでみるのだが・・・。”
と、不埒な事を考えている。

そのご利益なのか、当日の大会では順調に釣り続け、終了時間5分前までに13尾となっていた。
”まわりは皆釣れてなさそうだが、もう1尾欲しいな−。”
と考えていた時に、目印がピューと走った。
油断していたので、あわてて瀬を2、3歩駆け下りる。
その時に、緩んでいた竿の尻栓がポロリと落ちた。
鮎釣り師の悲しい性で、両手で支えていたのに右手を放して、尻栓を受けようとしてしまった。
その瞬間、竿が大きく左前方へ傾き、フッと軽くなってしまったではないか。
掛かり鮎は取り込めず、尻栓は流してしまうは、オマケに検量では1尾足ら ずの連続記録を更新してしまった。

重たい足を引きずって家へ帰ると、いつもは大会成績に無関心な女房が、
「どうだった?」
開口一番、聞いてきた。そして、
「私の毛、ご利益あったでしょ〜う。」

チ ッ ク シ ョ −! 勝てないわけだ。

皆さん、友釣りは実力でやりましょう。
 

−鮎三昧−
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