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11 月 アオリイカ哀歌

能登島水族館沖に久し振りにアジ釣りに行った。
30Cm級のアジも含め、まあまあの釣果で満足の行くものだった。
相棒が亘さんだけに、このまま釣りが終わらないことは覚悟の上だ。
午後3時を過ぎたので、彼の顔を覗き見ると当然といった顔つきをしている。 急いでゴムボートを仕舞い、下佐々波漁港に向かった。

赤灯台の下は沢山の釣り人で賑わっていたが、先端が空いていたのでそこに釣り座を構えた。
亘さんを盗み見ると、側線の入ったアジカラーをセットしている。
今日は自分には思惑があったので、同じ色をセットした。
意味はこういうことだ。同じ餌木で、近いポイントへキャストすれば、イカが乗る確立は五分五分だろう。 釣果に開きが出るなら、自分のシャクリが未熟ということになる。
だが10分もしない内に、
「○○さ〜ん」と言う猫なで声で呼ばれてそちらを見ると、もう竿がしなっているではないか!
そんな調子で立て続けに2杯釣り上げられて、熱くなってしまった。
こちらはもう研究の気持ちなぞはどこかに飛び散り、餌木をオレンジに替えて、やみくもにシャクリだしている。
しかしイカは反応してくれない!
時間だけが過ぎ去って行く。

薄暗くなって、気持ちも冷え出してきているが、彼も泣かず飛ばずに落ちいっているのがせめてもの慰めだ。
ここでふっと、先日(11月7日)に大釣りした記憶が思い出された。
確かあの時は足元ばかりだったな〜と・・・。
やけくそでキャストはせずに、真下に下ろして底立ちを取ろうとしたら、その瞬間グーンと来るではないか。
あわてて早あわせぎみになったが、何とかフッキングをしてくれた。
嬉しい今日の初ものを大事に取り込み、ホッと一息。

足元は1杯釣り上げると墨をはかれて当分ダメなので、次は沖めへキャストしてシャクてくると、 またズンときた。
これは良型で、しばらくやり取りをしたあと無事取り込んだ。
なんとなく歯車の回転が良くなったのが感じとれる。

そうなると、今度は焦るのは彼の方だ。無口になり、黙々とキャストしている。 そんな彼に久し振りに待望の1杯が乗った。流し目でこちらを見ているのが分かる。
だが、彼がやり取りしている間に、私にも乗っていることも知らずに・・・。
こうなると勢いが違う。
10分後にこちらにまた乗り、とうとう逆転してしまった。
「今日はあと30分で止めるぞ−。」
と言いながらキャストしたら、またまたズンときた。
こちらは内心ニヤニヤしている。
2杯負けていたのがまたたく間に2杯のリードに変わり、こちらが流し目で亘さんを見るようになった。

30分たち、二人とも最後のキャストと言いながら沖に向かって投げた。
底立ちをとり、最初のシャクリを入れようとしたら、根掛かりのようで動かない。
そのうちグイーン、グイーンと強烈な引きが伝わり、ドラグをジィー、ジィー鳴らして、 糸を引き出して行くではないか!
「オーッ、でけぇー。」
この大物とのやり取りのあいだ、心配そうに亘さんが覗きこんでいる。
もちろん、私のやり取りの心配ではなく、そんな大物取り込まれたら自分の大敗が確定してしまうという心配なのだ。
そうこうしている内に何とか足下まで寄ってきた。 薄暗い中、ヘッドランプを灯して覗き込むと 胴長はゆうに30Cmはあろうかという大物だ。
私は今までに26Cm程度のものしか釣ったことがない。
自己記録更新の大チャンスだ!。
心臓がいっきにドキドキと脈打ち始めた。
ここでハタと困った。
今日はアジ釣りが目的なので、磯ダモを持ってきてなかったのだ。
ここの防波堤の高さは、4メートルはある。
車の中に置いてあるタモは、船用で1メートルほどしか長さがない。
周りにはもう誰もいなくて、助っ人を頼むべくもない。
足一本の針掛かりだが、意を決して抜き上げることにした。
恐る恐る持ち上げる、竿が目一杯しなる。
だが、水を切った瞬間、ザッバーンという水音とともに、私と大物の縁が切れてしまった。 餌木に残ったものは、2センチほどの足の欠片だけだ。

バラした瞬間に亘さんの発した、意味深の押し殺した ”ウ〜ッ!” という叫び声が今で も耳の底に残っている。
叫び声の意味なんぞ聞かなくてもわかっているのがシャクの種だ。
 

−鮎三昧−
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