ピエロ

       

巨大なテントに明りが灯る
今日も華やかにサーカスの始まりです

サーカス小屋はオモチャ箱
わんさと夢がつまってる
大人の心に子供を灯す

七色の衣装をまとった人達が右へ左へと跳び回る
ときに激しくときに柔やかに
従順な獣達
着飾った小犬の一団
宝石をちりばめたカクテルライト
遥か頭上で揺れるブランコ

ひといきれに湧くサーカス小屋
お客の心が和んだころ
いよいよピエロの登場です
とぼけた仮面に素顔を隠して

「お客さまの笑いを頂戴」

おどけた動きはお手のもの
ズッコケ しりもち
なんでもござれ
そんな姿が笑いを誘う

緊張感あふれる綱渡り
ピエロがやればどこかコミカル
おっかなびっくり歩をすすめ
期待の通り落っこちる
そんなピエロをお客が笑う

だけどお客は誰一人知らない
仮面の奥の冷たい涙を
おどけたキャラクターに隠れた深い心の傷を

ピエロはいつも泣いている
失くしたものを指折り数えて
届かない想いを独り抱きしめて
夢は彼方に遠のいて

そんなピエロを癒すのはお客の笑い
サーカス小屋に咲く笑顔の花
「だからもっと笑ってよ」
喝采ではなく心の底からの笑いを

お客が帰って
テントの明りが消えた
今日のサーカスはおしまいです

暗いテントの片隅で
素顔のピエロがうずくまる
小さく背中を震わせて