第14回 「自浄其意」
意識して「心のおそうじ」を行うこと
今回、取り上げさせていただきました「自浄其意」という禅語は、「七佛通戒偈」の一句です。「七佛通戒偈」は、たった四句の仏様をたたえる短い偈文です。
諸悪莫作 (悪いことをしない)
衆善奉行 (善いことをしよう)
自浄其意 (そうやって自らの心をきれいにしていく)
是諸仏教 (これが仏様のみ教えである)
唐代の著名な詩人である白居易(772-864)が若かりし頃、鳥窠道林和尚(741-824)に「仏の教えとは何か?」と問いました。すると道林和尚は「諸悪作すことなかれ、衆善奉行せよ。(悪事は働かない、善行に励むことである)」とおっしゃいました。幼い頃から頭脳明晰で、5歳で詩作するほどでもあった白居易にとって、道林和尚の言葉はあまりにも端的すぎて、深遠なるものと思っていた仏教とは大きくかけ離れたものだと感じたことは想像に難くありません。思わず白居易は「そんなことは3歳の子どもでも知っていることです。」と言いました。すると、道林和尚は「3歳の子どもでも理解できるが、80歳の老人でもこれを行うことは難しいことだ。」とおっしゃいました。この言葉にすっかり得心してしまった白居易は道林和尚に惚れ込み、仏教に深く帰依したとのことです。
我々の心というものは、掃除という「善行の実践」を通じて、輝きを増していきます。そして、そうした“心のおそうじ“によって、私たちは生まれながらに具わっている仏性(誰もが有する仏の性質)の存在に気づきます。お釈迦様は“心のおそうじ“によって、自己の中に存在する仏性に気づきました。それがお釈迦様のお悟りにつながり、生涯の生き方となっていったのです。
我々人間は時に道から外れた言葉や行いを発してしまうことがあります。まさに「言うは容易く、行うは難し」ではありますが、少しずつでいいから、“心のおそうじ“を意識して、善行に励む努力を続けていきたいものです。小さな努力でも積み重なれば、必ず自らの中の仏性に気づき、お釈迦様のお悟りに近づいていくことでしょう。
どうぞ、自らに存在する仏性の可能性を信じて、意識的に“心のおそうじ“を!