第1回 「般若心経に親しむ」
仏教に関心がある人はもちろん、ない人でも、「般若心経」というお経があることは、ご存知ではないかと思います。般若心経は曹洞宗などの禅宗各宗派はじめ、天台宗や真言宗の密教系宗派で唱えられます。また、写経をされたことがある方は、一度は般若心経を写経した経験がおありなのではないかと思います。
お正月などのご祈祷で、お坊さんが太い経本を左右にバラバラと扇子を広げるようにしているのをご覧になったことがある方もいらっしゃるかと思いますが、あれは「
この600巻の経典は「
この般若心経を漢訳した人物の一人が中国・唐代の大経訳家の
そんな般若心経が説くみ教えとはいったいどんなものなのでしょうか?
それは、「諸行無常」の現実を受け止め、少しでも仏様のお悟りに近づいていくことです。
「諸行無常」というと、特に私たち日本人は「平家物語」の冒頭にある「
しかし、この世で、永遠不滅のものはあるのでしょうか?いのちあるものは、この世に誕生したら、少しずつ、老いていき、そして、必ずや最期をむかえるのです。今、新築した家も、何十年か建ったときには、建て替えときがやってきます。それが諸行無常という「この世の道理(この世のしくみ)」なのです。そうした道理を受け止め(認め)、少しでも心安らかに、生き生きと毎日を過ごし、仏の悟りに近づいていくことが「般若心経」に込められた願いなのです。
また、諸行無常とは「万事が変化する」ということです。変化とは、決別のような寂しさを伴うものばかりではありません。成長のように喜びを伴う変化もあります。大切なことは自分だけの見方で変化を捉えないということです。すなわち、自分の都合や好みだけで、変化を選り好みせず、どんな変化も受け止めていくことが仏の悟りだということです。
諸行無常であるという日常を生かされている我々が、どのような生き方を目指していけばいいのか―?それが般若心経の約260字の世界の中には、凝縮され描かれているのです。