第4回 「希望を持って」
菩提心を発したからといって、何か自分にいいことが起こるわけではありません。見返りを求めながら、仏道修行をすることは間違いです。
また、菩提心を発しても、自分の来世が自分の思い通りになるわけでもありません。それは自分が決めることではなく、仏の願いによって、六趣(六道)のどこかに赴くと共に、そこで四生(胎・卵・湿・化)という四つのいずれかの姿に生まれ変わると道元禅師様はおっしゃいます。
人間の未来は誰一人として的確に予想することはできません。たとえその人が周りが認める善人であっても、悪条件下での生活を余儀なくされることもあれば、悪行三昧の人でも平和で幸せな生活を送ることもあります。必ずしも、自分の思い通りに事が運ぶとは限らないというのが、“この世のしくみ”なのでしょう。そのことを我がこととして、しっかりと抑えておきたいものです。
―平成25年3月11日―
東日本大震災が発生して丸2年が経過したこの日、全国の
―平成30年11月現在―
発生から7年。平成の時代が終わりを告げようとしています。規模こそ違えど、震災に風水害等、この間、様々な災害が発生しました。そうした災害と道元禅師様が説く「
多発する自然災害に向き合うとき、こうした自然災害は皆で共有すべきことであると考えています。時間が経てば、記憶は風化していきます。そんな薄れゆく記憶を蘇らせる機会を意図的に作り出していきたいものです。また、被災された方々に思いを馳せていくことも大切です。被災者の現況を我がことと捉え、その悲しみや苦しみに寄り添っていきたいものです。そうした姿勢が道元禅師様のみ教えに対する一つの向き合い方のように思います。
かつて、人権主事時代に訪れた東日本大震災の被災地である宮城県や福島県で出会った被災された方々が口々に発した「震災のことを忘れないでほしい」とか、「被災地で見聞きしたことを多くの人々に伝えてほしい」という言葉が思い出されます。“被災者の生の願い・今の願い”を受け止めながら、お互いに支え合い、助け合って、希望を忘れずに毎日を過ごしていきたいものです。