22 「陰口は慎んで・・・」

(むか)わずして愛語を聞くは、(きも)(めい)じ、(たましい)に銘ず

面と向かって愛語をいただけば、人は喜び、大きな励みとなります。そんな愛語を、もし、自分の知らないところでいただいたとしたら、どうでしょう?たとえば、自分のいないところで、誰かが自分を高く評価するなどして、誉めてくださっていたとしたら・・・?その感動は、直接、高評価のお言葉をいただく以上に大きく心に残るものとなるでしょう。それが今回の一句が指し示すものです。

まず「面わずして」とあります。これは全段にある「面いて」と対になっており、“面と向かわないところで”という意味があります。そんな中で、愛語をいただいたとしたら、その感動や喜びは「肝に銘じ、魂に銘ず」ということですから、「心(肝)の中に深く刻み込まれると共に、記憶(魂)の中にもしっかりとインプットされ、その人を大きく成長させていくものになるだろう」というのです。

人を肯定するにしろ、否定するにしろ、本人に面と向かって言うのは難しいものです。なぜなら、人間にとって、本音で言葉を交わすことは、そう容易いことではないからです。

ところが本人がいない場所ならば、話題の中心となる本人と面と向かわないためか、他者を肯定するにしろ、否定するにしろ、さほど難しいことではなくなるようです。こうした自分のいないところで出た他人からの評価は、より本音に近いものであるようにも思います。だから、自分に対する高評価は、うれしくなるのですが、自分に対する批判ならば、そのショックも大きいわけです。いずれにしても、本人のいないところで、その人の会話をすることは、本人が知った場合には、大きな感動や喜びになることもあれば、ショックを与えることにもなりかねず、それほどまでに当人の心の中に残ってしまうということを、私たちは知っておくべきかと思います。

その点を押さえた上で、本人のいないところでは、相手を批判するような陰口は控え(ジャーナリストの池上彰氏は「陰口は本人に面と向かって言える程度に収めよう」とおっしゃっています)、本人を高評価するような言葉を施していきたいと思うところです。