第3回  「雨奇晴好(うきせいこう)


何事もよさをもっていることを知り
物事の良し悪しに振り回されない


北陸のような雪国では、雪は嫌われ者です。建物への被害、交通渋滞、除雪時の雪の捨て場所の問題。雪が降ることは、雪国に生きる人々を苦しめているようにさえ感じることがあります。

その反面で、こんな話もあります。

金沢の観光名勝の一つである「兼六園」―冬の金沢に県外からやって来る観光客の目的は「雪景色」だそうです。あまり雪が降らない地域に住む方々から見れば、“雪国の嫌われ者”も、珍しくて風情のある存在だと感じさせるのでしょう。

「兼六園」では「金沢城・兼六園四季物語」というイベントが開催されています。これは、夜間に園内をライトアップし、春夏秋冬の各時期における兼六園の魅力を堪能するというイベントです。以前、趣味の写真を撮るために、冬の兼六園で開催されいるこのイベントに足を運んだことがありますが、ほのかなライトの光を浴び、雪に覆われた兼六園がとても美しく、感銘を受けたことがありました。兼六園以外でも冬晴れのある日、所用で新潟県に向かう道中、眼前に広がる立山連邦の雪渓に感動したこともありました。ある時はあんなにうんざりさせられた雪も、ある時は感動を呼び起こすこともある―雪ひとつとってみても、そうした「両面」を備えていることに気づかされます。

雨奇晴好(うきせいこう)」というのは、まさに、そういう意味の禅語です。晴れた日には晴れた日のよさが、雨の日には雨の日の趣きが、雪の日には雪の日のすばらしさがあるのだから、自分の考え方や都合だけで、天候の善し悪しを決めつけたり、天候に振り回されたりしないようにしようということです。

「雨の日は気が滅入る。」とか、「今日は天気がよくて、気分も最高だ。」という具合に、我々の感情は、天候に左右されやすい面があります。しかし、どんな天候であろうが、天気にとらわれることなく、自分のやるべきことはしっかりとやり、守るべきことを守れるような人間になりたいものです。