第2回 「中陰(ちゅういん) 成仏(じょうぶつ)”の機縁(とき)

仏教では人が生まれてから死を迎え、次のいのちに生まれ変わるまでを4つの期間に分けて考えます。これを「四有(しう)」と申します。存在のことです。「四有」を下記の一覧表に示します。

生有(しょうう) 母体に命が宿ったとき
本有(ほんう) 生まれてから死ぬまで
死有(しう) 臨終の瞬間
中有(ちゅうう) 生有と死有の中間的存在(死後、次のいのちを受けるまでの間)

この中で、C「中有」を、「中陰(ちゅういん)」とも申します。前回、昨今の曹洞宗では、荼毘に付された故人様はご遺骨を安置して読経供養する「安位諷経(あんいふぎん)」が営まれた後、開蓮忌法要(かいれんきほうよう)(中陰法要または初七日(しょなのか))が営まれることが多いとご説明させていただきました。仏教の思想では、この後、娑婆世界での生を全うしたいのちは、七日ごとに姿形を変えながら、次生に生まれ変わり、その期間は最長で七七日(四十九日)を要すると示されております。

これに基づき、故人様の死後、次生における成仏(仏として生まれ変わること)を願い、七日毎にご自宅の祭壇にて読経供養させていただく仏事法要が営まれます。そうやって毎週、読経供養が続けられ、最後となる七七日、「満中陰(まんちゅういん)」となったときに営まれるのが、「四十九日」法要です。

七日毎のご供養や四十九日法要については、この後に詳細をご説明させていただきますが、思えば、長年、娑婆世界の人間として生かされてきたいのちが、すぐに姿形を変えることは難しいことです。だから、次のいのちに生まれ変わるまでには準備期間が必要となるわけで、この期間に故人様の成仏(仏に成ること)を支援すると共に、自分たちの身心をも調え、故人様共々に仏のお悟りに近づいていくのが、この世に遺された者たちの役目ではないかという気がします。満中陰までの期間というのは、故人様の死後の手続き等で、何かと慌ただしく過ぎ去っていくものですが、そんな中で、頭の片隅に、“我が身を調える仏道修行の場をいただいている”ということを思っていただければよろしいかと思います。

また、故人様の成仏を願うことは、仏と成った故人様が自分たちの心の支えとして生まれ変わることを願うということでもあります。それは、自分たちの信仰の対象として、生まれ変わることをも願うということでもあります。そういう意味で、「中陰」は故人様の確かな成仏を遺族が受け止めていく仏縁(きっかけ)となる大切な期間でもあります。

こうしたことは、ご遺族様だけに限られたものではありません。ご遺族様始め、故人様に関わる全ての人が、共に生まれ変わり、仏に近づいていくための大切な仏縁として中陰を過ごしていただくことを切に願うのです。