第21回「全てはつながる ―過去・現在・未来の仏様−


過去・現在・未来の諸仏共(しょぶつとも)に仏となるときは
必ず釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)となるなり
()即心是仏(そくしんぜぶつ)なり


時間の流れを大きく分類すると、過去・現在・未来の3つに分けることができます。仏教ではこの3つを「三世(さんぜ)」と申します。この世に存在する全てのものは、三世という時間の流れの中でとどまることなく変化し、生成消滅を繰り返していくというのです。

その三世に仏様を当てはめてみると、仏様も三世の中の存在であり、過去の仏、現在(いま)の仏、未来の仏が存在することになります。過去の仏は「過去仏」と呼ばれます。これは仏教の開祖であるお釈迦様がお悟りを得られる前に存在していた仏様です。お釈迦様のみ教えというのは、実はお釈迦様がお悟りを得る以前から存在していて、お釈迦様ははるか昔から存在していたこの世の道理に初めて気づいた方だということなのです。すなわち、人間世界において初めて、太古の昔から存在していた道理に気づき、それを明確にして人々に発しつつ、悩み苦しむ人々を救ってきたのがお釈迦様であったということなのです。そして、そうした過去の先人たる「過去仏」によって、お釈迦様はお悟りを実現させることができたとも言えるのです。

そうした過去と未来との間にあるのが「現在」です。現在における仏様は他でもなくお釈迦様です。今を生かされている私たちが悩み苦しむとき、救いの手を差し伸べてくれるのがお釈迦様です。前回「(いわ)ゆる諸仏とは釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)なり」というみ教えに触れました。あらゆる仏様の原点がお釈迦様であるということなのですが、現在においても、すべての仏様はお釈迦様に帰結し、お釈迦様が仏様の代表だということなのです。

それでは「未来」における仏様とは一体、どういう仏様なのでしょう・・・?

お釈迦様がお悟りを得てから56億7千万年後の世界、お釈迦様と同じく道を成す仏様が「弥勒菩薩(みろくぼさつ)様」であると言われます。弥勒菩薩様はお釈迦様のお弟子様として実在した人物のようで、56億年先に未来仏(将来仏)として人間世界に登場し、あらゆる人々を救ってくださるというのです。この「弥勒菩薩様」にしても、現在の仏様であるお釈迦様が原点です。

こうして見ていくと、過去の仏様も未来の仏様も現在のお釈迦様とつながっていることに気づかされます。それが今回の一句における「過去・現在・未来の諸仏共に仏となるときは必ず釈迦牟尼仏となるなり」が意味するところです。

続いて「即心是仏(そくしんぜぶつ)」という言葉が出てまいります。「即心」というのは、「心そのままに」ということで、私たちの心がそのまま仏であるというのが、「即心是仏」です。

私たちの心は変化します。周りに喜んでいただけるようなことがしたいと思えることもあれば、周囲の誘惑に負けて悪事を働くこともあります。そうした様々な方向に変化する心を、心の持ち主である自分自身が調整し、仏に近づけるようにしていくことが「即心是仏」なのです。そうした「即心是仏」によって、私たちはお釈迦様のお悟りに近づいていけるのです。それは過去仏であれ、56億年後の未来仏である弥勒菩薩様でも同じです。過去の修行・悟りの集大成が現在仏であるお釈迦様となり、それが未来の弥勒菩薩様につながっていくのです。

過去・現在・未来は全てつながっています。今の自分は過去の自分の行いの結果であり、今の自分の行いの結果が、未来の自分につながっていくことを、三世の思想を通じて、再確認しておきたいものです。