第5回 「静寂な夜に死す」
お釈迦様が涅槃に入られた(お亡くなりになった)のは2月15日の夜半と伝えられています。師との別れが近いことを知ったお弟子様が師の最期の言葉を一言も聞き漏らすまいと静かに耳を傾けているのか、あたりは物音一つなく、静寂に包まれた状態であることが「是の時中夜寂然として聲無し」の部分から感じられます。それが、お釈迦様がお亡くなりになった2月15日・夜半の様子です。
そんな中で、お釈迦様は集まってきたお弟子様たちに最期の説法をなさいました。それが記されているのが「仏遺教経」であり、この後に展開される「
「法要」という言葉が出てまいります。一般的には、お寺の儀式や法事という意味で使われることが多いですが、ここでは仏法の要旨として捉えておくべきでしょう。29歳で出家し、35歳でお悟りを得たお釈迦様が45年もの間説き続けてきたみ教えの中から重要な箇所を抜粋して、最後に示されたというのが「諸の弟子の為めに略して法要を説き給う」の意味するところです。
お釈迦様がお亡くなりになったときの様子が描かれている「涅槃図」を見ると、満月の夜、沙羅の木の下で多くの人々が泣き悲しむ中、伏していらっしゃるお釈迦様のお姿が描かれています。最期の説法を終えて、安らかに涅槃に入られたお釈迦様。永遠の別れを悲しむと共に、お釈迦様が生前、お示しになられたみ教えについて語らい合うお弟子様。こうしてお釈迦様にとって最期となった静寂な夜は更けていきました。そして、これが今のお通夜の起源になったのです。
私たちも同じように、故人との別れを悲しみ、思い出を語らい合う場としてお通夜を過ごしていけたらと願うものです。