第16回 「因果の道理を体得する」


所謂四大五蘊遂(いわゆるしだいごうんつい)に和合し、四支五根忽(ししごこんたちま)現成(げんじょう)す。
しかのみならず、三十六物(さんじゅうろくもつ)十二因縁造作遷流(じゅうにいんねんぞうさせんる)し、展転相続(てんでんそうぞく)す。
但衆法
(ただしゅほう)
(もっ)合成(ごうじょう)して有り。


四大とは、この世を構成している4つの要素のことで、下記の一覧の通りです。

地(ち) 堅固を性とする土地、地面
水(すい) 湿潤を性とする液体的なもの
火(か) 熱を特性とする炎、燃えているもの
風(ふう) 動転を性とし、物を増長するもの


次に五蘊ですが、蘊には積むという意味があります。下記の5つが積み集まって五蘊となります。

色(しき) 肉体や物質 四大及びその合成から成るもの
受(じゅ) 外からの刺激を感受する心の作用
想(そう) 心の中に思い浮かべたもの
行(ぎょう) 心の中に思い浮かべたものを判断する作用。
識(しき) 分かち知ること。認識すること。


この世に存在するものは、因縁によって四大五蘊が和合して生成し、その因縁が尽きると、消滅していくきます。それが諸行無常という、この世の道理です。

引き続き、四肢五根とあります。五根はこれまでも頻繁に登場してきた眼・耳・鼻・舌・身(身体)という私たちを作り上げている5つの要素です。四肢は両手両足のことです。それらも四大五蘊同様に関わり合いながら、現成している(我々の眼前に現れること)というのです。

それだけではありません。各種内臓器官や汗・涙など、人体の不浄物を意味する三十六物にしろ、我々凡夫が暮らす迷界における十二の因果関係を示す十二因縁にせよ、次々とボールが転がり続けていくように(展伝相続)、お互いに関わり合っているというのです。全て(衆法)は関わり合って、善悪いずれかの因を生み出し、それに応じた結果が生じていくのです。それがこの世界の真実の姿であり、「因果の道理」というのです。

こうした「因果の道理」を体得して日々を過ごすことが、三毒煩悩の一つにある「愚かさを断つ」ことにつながっていきます。何一つとして単体で存在するものはありません。全てが関わりのある存在であるというこの世の真実の姿をしっかりと押さえておきたいものです。

次回は紙面の都合上、十分に味わえなかった「十二因縁」について触れてみたいと思います。