第27回「智者の心得」


()の故に智者は制して而も随わず、
之を持すること賊の如くにして縦逸(じゅういつ)ならしめざれ、
仮令
(たとい)
之を(ほしいまま)にするとも皆亦久(みなまとひさ)しからずして其磨滅(そのまめつ)を見ん


自らの五根(眼・耳・鼻・舌・身)を調え、自らの中に存在する(むさぼ)り・(いか)り・(おろ)かさの三毒煩悩を言葉や行いにして表に出さないようにしていけば、心安らかなる幸せな毎日を過ごすことができるとお釈迦様はお示しになっています。そのことを私共凡夫が頭で理解するのは、さほど難しいことではありません。しかし、いざ、実行していくとなると、難解であることに気づかされます。

お釈迦様はそのことを踏まえ、たとえ難解なことであろうが、幾度も失敗を繰り返してもいいから、自らの五根を制し、三毒煩悩の調整を常に心がけながら、お釈迦様のお悟りに向かって精進してほしいと願っていらっしゃいます。そして、それを行じ続けることができる者を“智者”とおっしゃいました。悟りのモノの見方や周囲との接し方を体得した智慧のある者が智者であり、これまで示されてきた「五根を制す」ことが智者の心得だというのです。

「賊の如くにして縦逸なる」とは、罪人を野放しにしておくが如く、自らの中の三毒煩悩を調整しようともせず、放ったらかしにしておくことです。これは智者ではなく、愚者の生き様です。

―日頃の自分たちの日常を振り返り、自分愚者か智者か?―
どうか、「智者の心得」を踏まえ、「縦にして其磨滅を見る(五根を制す)」ことを心がけながら、智者を目指していきたいものです。