第28回「心を調える」


()の五根は(しん)()の主と為す、()の故に汝等當(なんだちまさ)()く心を制すべし


「眼・耳・鼻・舌・身の五根は“心”を主とする。だから、十分に心を調えるように。」とお釈迦様がお弟子様たちにお示しになっているのが、今回の一句です。

色(私たちの肉体・物質)という目に見える存在に対して、心は目に見えない存在です。そんな心は私たちの日常生活の中に頻繁に登場します。しかし、その正体は明確に説明できるのでしょうか。色のような自分たちの目に見える存在でさえ、多様な解釈や捉え方が成り立つのに、そうでない心ならば、尚更で、経論等においても、はっきりと定義づけられておらず、諸説が存在しているのが現実です。

そういう意味では、心というのは厄介な存在だといえるかもしれません。お釈迦様はそうした心の性質を熟知していらっしゃったからこそ、次段において、心の恐ろしさを比喩を用いながら、明解に説いていらっしゃるのです。(詳細は次回、ご説明させていただきます)

そんな正体がわかっているようでわからない、捉えどころがない心というものを、とにかく調えるようにとお釈迦様はおっしゃっています。

坐禅をやってみると、姿勢が調えば、心が落ち着き、安らかな気持ちになります。日常の所作一つ一つを丁寧に行うことや規則正しい生活習慣を意識していくことで、私たちの心は調っていきます。それから、生きている限り誰しも持っている三毒煩悩(貪り・瞋り・愚かさ)を言葉や行いにして、外に出さないようにしていくことを意識していくことで、心は調ってきます。

そうした心の調整によって、心を主体とする五根も調っていくことを押さえ、日々の生活を過ごしていきたいものです。