第35回「比丘のあり方 −ミツバチの如く−

蜂の花を採るに但其(ただそ)の味わいのみを取って色香(しきこう)を損ぜざるが如し、
比丘(びく)亦爾(またしか)なり


ハチミツはミツバチが野に咲く花の蜜を取って加工し、巣に蓄えてできるそうです。ミツバチが花に留まり、蜜を吸い取っても、花の姿形が変わることはありません。色も香りもそのままです。

こうしたミツバチのような生き方を、お釈迦様は比丘(仏弟子)に願っているのが今回の一句ですが、その願いとは具体的にはどんなものなのでしょうか。

それは「何が大切なものなのかをしっかりと見極めた上で、それを受け取っていくのを意識すること」です。前回より、食に関するみ教えが示されています。“食=薬”という捉え方、分量やメニュー、内容ばかりに捉われるような食との関わり方を慎むことが示されてきました。こうした食の捉え方をお釈迦様はミツバチの喩えを用いながら、比丘に指し示していらっしゃるのです。

これは食に限ったことではありません。日常の万事において、私たちは自分の好悪の感覚に捉われ、周囲のいのちに対して、差別的な関わり方をすることを慎んでいかなければなりません。そうした比丘のあり方を今一度、再確認し、日々の生活を過ごしていきたいものです。