第33回 「花枝自短長(かしおのずからたんちょう)


それぞれが自分の得意分野を最大限に発揮する

人に頼るのが苦手な人、あるいは、「自分でやった方が早い」と思って人の力を借りようとしない人、そういう人はどこにでもいます。それは決して、悪いことではありません。しかし、全てを自分の力だけで成し遂げられるならばいいのですが、どんな人間も得手があれば不得手があります。それゆえに、不得手とすることをやらなければならないときに、それを得手とする人の力を借りない限り、事を勧めることができません。一人で事を勧めることには限界があるのです。

何事も自分の力だけで成し遂げられるかと言えば、そうではありません。身の回りのことや小さな事ならばいざ知らず、事が大きくなればなるほど、人手が必要となります。様々な能力を有した者同士が協力し、自分の力を最大限に発揮することで、一大事が無事円成していくのです。

寒い冬の間、寒さの中でじっと耐えていた植物たちは、春になって暖かくなってくると、一斉に芽吹きます。桜のように多くの人を魅了する美しい花、地面に這うように咲く多年草のネモフイラは青い絨毯のように美しく、鮮やかで色とりどりのチューリップやフリージアの花は春の訪れを知らせてくれます。自然は季節ごとに姿を変え、夏には夏、秋には秋、冬には冬のすばらしさを体現しています。それぞれが精一杯、自分たちのいのちを輝かせ、その融和・和合が人々の心を魅了するのです。

「花枝自短長」―短い花にも長い枝にも、それぞれのよさや味わいがあります。そうした大自然に生かされる植物たちと同じように、人間も自分たちの得意分野を生かしながら、支え合い、助け合っていくところに集団や組織の素晴らしさがあるように思います。

「花枝自短長」が実践されている組織には助け合いの精神が働きます。そこでは組織を形成する個々のメンバーが相手の得手不得手を理解し、和合しています。だからこそ、組織の寿命が延び、そこに存在している花や枝が生き生きと自らの役割を果たし、生きる喜びが実感できるのです。組織を引っ張るリーダーこそ、「花枝自短長」を知り、個々が遺憾なく個性を発揮できる環境づくりを目指していただきたいものです。