第34回「百不知百不会(ひゃくふちひゃくふえ)


「知らないことがたくさんあること」を素直に認めて過ごす


自分が知らない話題で場が盛り上がると、何とかして、その話題についていきたいという思いからか、ついつい知ったようなことを口にしてしまったという経験は、大なり小なり、誰にでもあると思います。人間には自分の知らない話題が出てくると、自分だけが取り残されたような不安を覚えたり、あるいは、知らないことが恥ずかしく思えてきて、無知だと思われないように振る舞おうとするところがあるようです。

しかし、それは自分の言葉や態度に対して、偽ることになり、当然、正しいこととは言えません。ですから、知らないことがあれば、恥ずかしがらずに、知らないことを素直に認め、わからないことがあれば、わかっている人に素直に教えを請う謙虚さが必要になってくるのです。そうやって、学びを継続していけば、人間は成長していきます。自分の無知を認め、常に謙虚に学び続けていくことは、知らなかったことを知ることにつながっていくのです。

周囲にの存在に対して、偏ったものの見方をすることも無知を生み出す原因になるように思います。人間には一つの存在に対して、たとえば、「好き・嫌い」や「良し・悪し」のように、自分の好みや価値観で二分して捉えてしまうところがあります。そうした性質が「興味のある・なし」を生み出し、興味がないものから目を逸らさせてしまいます。そして、「知っている・知らない」につながっていくのです。

かつての私はそういうものの捉え方をしていました。そのために話題が偏っていました。知っている話題ならば、いくらでも話のネタが出てくるのに、知らない話題になると、何も話せなくなってしまうのです。そうした偏ったものの捉え方が、布教の道を歩む上で、大きな障害となり、随分と悩んだことが思い出されます。

そんな私の悩みを解決してくれたのが、タレントのタモリさんです。平成26年3月31日に32年間にわたって平日のお昼に放送されてきた「笑っていいとも!」が終了した際、番組のコーナーの一つであった‟テレフォンショッキング”における過去の名シーンが放送されました。このコーナーでは、毎日、俳優や芸術家、スポーツ選手にアイドルと、様々な分野で活躍する異年代のゲストとタモリさんが数十分に渡ってトークを行うのですが、タモリさんの知識の豊富さ、話題を生み出す引き出しの多さに改めて感銘を受けたものです。知識や興味に偏りがあれば、タモリさんのような魅力的なトークはできません。人を惹きつけるのも難しいでしょう。どんな分野にも興味を持ち、自分の方から関わっていく積極性が自分の学びを深めると共に、そうした姿勢が布教の場にも必要であることを、様々な道の最前線を歩む人と会話を楽しむタモリさんから教えていただいたのです。

この世には様々な存在があり、一人の人間が完全に全てを把握するのは不可能です。知らないことがあって当たり前、それを素直に認め、日々、謙虚に学んでいくことで、人間はタモリさんのような魅力的な人間味を有した、話題豊富な存在になっていくのです。