第31回「調身の要術その4 ―“節量食”を意識して―」


(およ)比丘僧(びくそう)は必ず食を節量(せつりょう)すべし、
節量食
(せつりょうじき)
といふは(いわ)く分を(かぎ)るなり、
三分
(さんぶん)
(うち)二分(にぶん)(しょく)して一分(いちぶん)(あま)すべし、
一切の風薬(ふうやく)胡麻(ごま)薯蕷(しょよ)等は常に之を服すべし。
()
れ調身の要術なり。


前回は「昼は勤心(ごんしん)に善法を修す」(日中はお釈迦様のみ教えに従い、時間を無駄にすることなく、身心を調えて、仏の道を歩む)ことを心がけていくとき、食事の量にも気を配り、適量を意識することが説かれていました。

「飽食の時代」と言われ、日常生活の中に食べるものが溢れかえっている昨今、食に対する意識が希薄になっていることは否めません。見た目や味の良し悪しばかりが注目され、食の本来の役割が軽視されているような風潮が多少なりとも残っているようですが、食が人間のいのちを育み、身心を調えていく上で重要な役割を果たしていることは確かな事実です。そのことを押さえ、身心の調整を心がけ、食の適量を目指していくことが「節量食」です。「節量」とは、分を(かぎ)る≠ニあるように、適度な分量をはかり決めることを意味しています。

「腹八分目に医者いらず」と言います。食べ過ぎは胃腸を酷使し、負担を与えます。逆に、全く食べないのも身心に悪影響であることは言うまでもありません。仮に3を最大値とするならば、2を食し、1を残すくらいが「節量食」ということなのでしょう。風薬とは風邪薬のことで、薯蕷は山芋のことです。ゴマの歴史は古く、古来より栄養価の高い食品として世界中で愛飲されてきました。こうした食物を口にする習慣をつけることを道元禅師様は勧めていらっしゃいます。

「節量食」を心がけ、栄養価の高い食品を摂取する習慣をつけることが健康の秘訣であり、「調身の要術」となるのです。