第53回「曹洞宗門の坐禅E ―戒・定・慧“三学の坐禅”―

又坐禅は戒定慧(かいじょうえ)(あづ)かるに()らず、(しか)()の三学を兼ねたり。


三徳(教・行・証)の観点からお釈迦様から受け継がれている坐禅について味わってまいりました。我々は、教え・修行・証(悟り)の三者がお互いに関わり合って、曹洞宗門の坐禅が形成されていることを瑩山禅師様から学ばせていただいたことになります。

そうした三徳に引き続き、瑩山禅師様は三学(戒・定・慧)の観点からも仏祖正伝の坐禅についてお示しになっていきます。三徳同様、三学における三者も「干かるに非らず」とあるように、お互いに関連し合いながら曹洞宗門の坐禅を形成している点では同じです。また、三者それぞれについての説明も、この後になされていきます。詳細はそちらに委ねるとして、今回は、三学について、簡潔に確認しておきたいと思います・

戒は「悪を断ち、善を修する」というお釈迦様の生き方・お誓いを指します。当HPでは、別稿にて道元禅師様の「教授戒文」を学ばせていただいておりますが、道元禅師様の戒に関する観点と瑩山禅師様のそれとを味わいながら、戒に関する理解を深めると共に、日常生活での実践を目指していきたいものです。定は「禅定」、すなわち、「坐禅」を意味しています。どっかりと腰を下ろし、身体を安定させることによってもたらされる心の安寧や気づきに関するものです。慧は三毒煩悩を断ち、真理を体得することです。お釈迦様は坐禅(定)という修行(行)によって、智慧(慧)を体得なさいました。坐禅そのものが仏の行いであり、そうした行いに我が身を投じ続けることが、戒(悪を断ち、善を修する)という教えの実践そのものなのです。まさに戒定慧の三学は、別個に存在しているのではなく、お互いに関わり合い、支え合って成り立っていることに気づかされます。

そして、そうやって見ていくと、実は三徳は三学と一致すると共に、教―戒、行―定、証―慧という、一致の図式が出来上がることに気づかされるのです。

そうした三学における個々の観点から、坐禅を味わってみたいと思います。