第2回「奉請三宝(ぶしょうさんぼう)

南無十方仏(なむじっぽうぶつ)南無十方法(なむじっぽうほう)南無十方僧(なむじっぽうそう)南無本師釈迦牟尼仏(なむほんししゃかむにぶつ)
南無大慈大悲救苦観世音菩薩(なむだいずだいひきゅうくかんぜおんぼさつ)南無啓教阿難尊者(なむけいきょうあなんそんじゃ)

今回提示させていただく箇所は、「甘露門」の冒頭で、「奉請三宝(ぶしょうさんぼう)」と呼ばれる個所です。「奉請」とは、「敬意を以てお呼び申し上げること」で、これから読経供養させていただく場に仏法僧の三宝をお招きして、み教えを請うというのが、「奉請三宝」です。

前回、「施食会(せじきえ)」というご法要について触れさせていただきましたが、「奉請三宝」には、鼓鈸三通(くはつさんつう)を鳴らしながら、亡きご先祖様の魂をお呼びして読経供養を捧げるのに際し、仏法僧の三宝もお招きして、亡き人々が仏のみ教えと触れる機会を設けようという願いも込められているのでしょう。これは亡き人々に対して、御仏の教えを供養させていただくということでもあります。

そうやって「奉請」された存在を下記の一覧表にまとめてみました。それぞれに「南無」という言葉が付されていますが、これは「帰依(きえ)」という、相手に我が身を全て委ね、お任せしていくことでした。それから「十方」とあるのは、「東西南北・四維(東南・東北・西南・西北)・上下」の「全ての方角」を意味しています。そして、阿難尊者様に付されている「啓教」というのは、「啓発」という言葉があるように、「教えを起こし、人々を導いていく」ということを指します。

南無十方仏 なむじっぽうぶつ 自分が帰依しているあらゆる仏様
南無十方法 なむじっぽうほう 自分が帰依する八万四千とも言われる仏法
南無十方僧 なむじっぽうそう 自分が帰依する仏教の祖師方や仏道修行者
南無本師釈迦牟尼仏 なむほんししゃかむにぶつ 本師(仏教の開祖)として帰依しているお釈迦様
南無大慈大悲救苦観世音菩薩 なむだいずだいひきゅうくかんぜおんぼさつ 自分が帰依する大慈大悲(人々から苦悩を除き、楽を与えること)を自らの役目とする観世音菩薩様
南無啓教阿難尊者 なむけいきょうあなんそんじゃ 自分が帰依するお釈迦様のみ教えを後世にお伝えしていくのに大きな役割を果たした高弟・阿難尊者様

仏教徒として自らが帰依する仏法僧全ての存在をお招きし、これから仏縁が育まれていこうとしているのです。それが「甘露門」の導入部となる「奉請三宝」の役目なのです。