第17回「五如来宝号招請陀羅尼(ごにょらいほうごうちょうしょうだらに)@多宝如来(たほうにょらい)宝勝如来(ほうしょうにょらい))―

南無多宝如来(なむたほうにょらい)曩謨薄伽筏帝(のうぼばぎゃばてい)鉢羅歩多(はらぼた)阿羅怛曩也(あらたんのうや)怛他蘗他也(たたーぎゃたや)
除慳貪業福智圓満
(じょけんとんごうふくちえんまん)

「五如来宝号招請陀羅尼」は、「五如来(ごにょらい)(五佛)」と申します「施食会のご本尊とされる五体の仏様」を招請(こちらからお願いしてお招きすること)し、そのみ教えを請うものです。下記に五如来について、簡単に触れさせていただきます。

多宝如来(宝勝如来) 三毒煩悩(貪り・瞋り・愚かさ)を取り除いてくれる仏様
妙色身如来(みょうしきしんよらい) 人々の表情を穏やかにしてくれる仏様
甘露王如来(かんろおうにょらい) 人々に安楽を与えてくれる仏様
広博身如来(こうはくしんにょらい) 人々に飲食の楽しみを与えてくれる仏様
離怖畏如来(りふいにょらい) 人々を浄土や悟りの世界に導いてくれる仏様

それぞれの詳細な説明は次回以降、「甘露門」を読み味わいながら、順次、行わせていただきますが、今回は「多宝如来(たほうにょらい)宝勝如来(ほうしょうにょらい))」について触れてみたいと思います。

多宝如来様は法華経「見宝塔品(けんほうとうぼん)」に登場します。お釈迦様がお弟子様たちに「あなた方は将来、仏になれる」という内容の説法をなさっていたときのことです。説法が終わると、地面から宝塔(ほうとう)(宝石や花で飾られた塔)が湧き出てきて、霊鷲山(りょうじゅせん)上にそびえ立ちました。この宝塔の中にいらっしゃたのが、多宝如来(宝勝如来)様で、お釈迦様のために座席を半分空けて坐っていらっしゃったというのです。ここにお釈迦様が入られ、多宝如来様と共に二体の仏様が同座したわけですが、こうして地中から仏様がいらっしゃる塔が湧き出てきたというのは、仏のみ教えの絶対性を証明するという意味があります。

すなわち、この世の人々が抱えている苦悩というものは、人間の心の底の底から湧き出てくるもので、そうした中々、見えにくく、感じ取りにくいところにこそ、真実があるということを意味しているのです。多宝如来様が宝塔と共に地から湧き出てきたということは、地中から地上のお釈迦様に対する共感の意の表明なのです。こうして、お釈迦様のみ教えは絶対的な真実であり、間違いのない、確固たるものであることを証明しているのです。

そんな多宝如来様に帰依することを願うのが今回の一句なのですが、なぜ、多宝如来様への帰依を願うのかと言えば、「除慳貪業福智圓満」とあるように、多宝如来様が三毒煩悩(貪り・瞋り・愚かさ)という、誰しもが有する自他共々の身心を乱すものを取り除き、人々に福徳をもたらし、智慧(仏のモノの見方・考え方)を育ませてくれる仏様だからに他ならないからです。

ちなみに、五如来様と関係が深いものの一つに、「五色(ごしき)」【黄・青(緑)赤・白・黒(紫)】があります。お寺の本堂に五色の幕が掲げられていることが多いですが、これは中国の思想に基づくもので、五色それぞれが仏教のみ教えと関連すると共に、五如来様とも通じています。

そうしたことも、追々と仏教の豆知識的に学ばせていただきたいと思います。