第19回「五如来宝号招請陀羅尼③―甘露王如来―」
南無甘露王如来。曩謨薄伽筏帝。阿蜜リ帝。怛他蘗他也。灌法身心令受快楽。
「五如来宝号招請陀羅尼」の三つ目に登場する如来(仏様)が、「甘露王如来」です。「甘露王」は「阿弥陀如来」のことで、甘露王(阿弥陀如来)に帰依することによって、不死を叶え、苦悩を除滅させてくれる甘露(仏のみ教え)が自分たちの身心全体に注ぎ込まれ、この上ない安心がもたらされるというのです。それが「灌法身心令受快楽」の意味するところです。
阿弥陀如来というと、浄土真宗のご本尊様として帰依されている仏様として知られています。それゆえ、曹洞宗とはあまり関係がないような印象が強いかもしれませんが、阿弥陀様をお祀りする禅宗寺院も実在します。ちなみに、浄土(仏菩薩が存在する清浄なる極楽の地)について、曹洞宗では浄土は他にあるのではなく、我々人間の心の持ち方ひとつで、どこにでも現れるものであるという立場を取ります。
そうした浄土が我が身・我が心に浸透していくことができれば、自分が浄土となり、仏菩薩になっていくのであり、これが仏教の目指すところでもあります。ちなみに、これを「成仏」と申します。「成仏」というと、死後の世界のことと捉えられがちですが、それだけではありません。むしろ、いのちをいただいて生かされている今こそ、私たち一人一人に求められている「人間性の完成」という、私たちの生きる課題なのです。成仏は、私たちが生涯に渡って、仏法と共に生きていくことができたときに成し遂げられていくのです。
日頃の日常生活を振り返るに、何かと小さなことでも動揺し、冷静さを欠いた言動を発してみたりと、身も心も十分に調っていない自分の姿を目の当たりにして、反省させられます。そんな我が身に法を灌ぎ、浄土の体が完成できるよう、「成仏」を生きる課題として意識しながら、日々を過ごしていきたいものです。