第45回 「耕雲種月(こううんしゅげつ)

“今・ここ”にいただいた仏縁を一生懸命に生きていく

令和4年2月4日、北京冬季五輪が開幕しました。昨夏の東京オリンピックにおける地元・石川県勢の目覚ましい活躍が記憶に新しい中、今大会では石川県から唯一代表に選ばれたアルペンスキー日本代表の小山洋平選手の活躍が期待されます。

小山選手は四年前の平昌五輪では代表候補の選考会で落選。以降は、只管に練習に没頭したとのこと。ところが、令和2年12月に、新型コロナウイルスに感染したことで、ワールドカップが欠場になるなど、逆風との闘いも余儀なくされたとのことです。しかし、そんな幾多の壁に出会っても、小山選手は決して、諦めることなく、次々と乗り越え、令和3年12月のワールドカップでは八位入賞。五輪派遣への切符をつかみ取ることができたというのです。

どんな困難な状況に直面しても、その現実を心静かに受け止めなつつも、決して、諦めることなく、目標に向かって真っ直ぐに進んでいくことを、仏教では「精進」だとか、「不退転(ふたいてん)」という言葉で説き示しますが、今回、提示させていただいた「耕雲種月」も同様のことを指し示しています。“雲を耕す”とか、“月の種をいただいて植える”とありますが、どちらも容易くできることではありません。というよりも、むしろ、労苦を伴う不可能とも言うべき行いです。しかし、そんな労苦を伴うようなことに対しても、決して、厭うことなく、月の種があるならば、我が眼前に拡がる人生の田畑に植えて、花を咲かせるまで耕し続けていくように、人生という道を、仏のお悟りに向かって只管に邁進していくことを説くのが「耕雲種月」なのです。

そもそも私たちは誰もが、この娑婆世界において、ご両親様から先祖代々伝わるいのちをいただき、それぞれの人生という道を歩んでいます。そして、その中で、都度都度に様々な道を選択し、今という時間・ここという場所で一生懸命に生きています。そうした各々の人生は各々のご先祖様からいただいた仏縁ということもできるでしょう。

そんな仏縁たる人生には困難がつきものです。しかし、それを乗り越えて先に進むことで、目標に近づくこともできれば、達成できることだってできることを多くの先人たちが証明しています。来る二月一六日の小山選手の演技を楽しみにしながら、我々も「耕雲種月」を心に留めて、日々を過ごしていきたいものです。