第15回 「坐禅の条件 その3 足の組み方」


尋常坐処(よのつねざしょ)には厚く坐物(ざもつ)を敷き、
上に蒲団(ふとん)(もち)

或は結跏趺坐(けっかふざ)、或は半跏趺坐(はんかふざ)

(いわ)く結跏趺坐は、()づ右の足を(もっ)て左の(もも)の上に(あん)じ、
左の足を右の(もも)の上に安ず

半跏趺坐は(ただ)左の足を以て、右の股を()すなり。
(ゆる)衣帯(えたい)()けて斉整(せいせい)なら()むべし


今回は坐禅中における「足の組み方」について触れてみたいと思います。「足の組み方」は坐禅の経験がなければ、なかなかイメージしづらいものです。そこで、できるだけイメージしやすいように、写真を用いて説明させていただきたいと思います。

まず、坐処(ざしょ)(坐禅を行なう場所)の準備について触れられています。左の写真にあるように、座蒲団の上に坐蒲(ざふ)を用いるようにとあります。坐蒲というのは座蒲団の上にある黒くて丸いクッションで、坐禅をする際に使います。この坐蒲を用いて坐禅をするのが一般的ですが、何も坐蒲を用いなければならないということはありません。「厚く坐物を敷き」とあるように、坐る場所が高くなっていればいいのであって、厚めのクッションでも構いません。ちなみに、高源院の坐禅会(やすらぎの会)では、一般家庭で使われているようなクッションを用いています。そこには「家庭の中にあるものを用いて、家の中でもいつでも気軽に取り組めるように」という意味もあります。

坐蒲(ざふ)

次に足の組み方ですが、二通りの組み方が記されています。

一つが「結跏趺坐(けっかふざ)」という左の写真のような組み方です。ご覧のように、右足を左股(ひだりもも)の上に乗せ、左足を右股(みぎもも)の上に乗せるという組み方です。仏像(坐像)の足の組み方は結跏趺坐になっていますが、この組み方は、言ってみれば、あぐらをかくような形で、足はそれぞれ(もも)の上に置くというものだとお考えいただければよろしいかと思います。


結跏趺坐(けっかふざ)

とは言え、こうした結跏趺坐で一定の時間、坐禅を組むのは容易いことではありません。そこで、この結跏趺坐を少し簡便にし、誰でも取り組みやすいように「半跏趺坐(はんかふざ)」という組み方も提示されています。写真のように、左足を右股に乗せるだけで、右足はあぐらのように左股の下にくるという坐り方です。

こうした二通りの足の組み方のうち、ご自分に合う方を選んでいただいて、坐禅を行うことになりますが、何も結跏趺坐ができることがすばらしく、半跏趺坐しかできないのが情けないということではありません。どちらの坐り方であれ、坐禅が「安楽の法門」につながることが肝心であり、坐り方含め、坐禅の方法の正誤にばかり捉われていては、「安楽の法門」にはつながっていきません。

半跏趺坐(はんかふざ)

ちなみに、足を組む方向は左右逆の組み方でも構いません。「普勧坐禅儀」で道元禅師様がお示しの組み方は「降魔(ごうま)坐」と申します。「降魔」とは修行の妨げとなる煩悩を降伏させることですから、「降魔坐」とは、煩悩から離れる坐り方だと解することができるでしょう。

そして、道元禅師様と逆の組み方が「吉祥坐(きちじょうざ)」と呼ばれる坐り方で、従来、インドではこの組み方がなされていました。この組み方は説法中の坐相であったそうです。

参考までに、降魔坐と吉祥坐を説明させていただきましたが、あくまで“参考”として捉えていただけたらと、「やすらぎの会」では申し上げております。

こうして、足を組み終えたならば、できるだけゆったりとした服装で、気持ちを楽にして、安楽の世界に身を置いていくことになります。