「縦横無尽の功徳」


既に帰依し奉るが如きは

生々(しょうじょう)世々(せせ)在々(ざいざい)処々(しょしょ)に増長し

必ず積功(しゃっく)累徳(るいとく)

阿耨(あのく)多羅(たら)三藐三(さんみゃくさん)菩提(ぼだい)を成就するなり



三宝を信じ、敬うことができる者―そうした三宝に帰依できる者たちは必ずや迷いや苦悩を離れ、悟りに近づけると道元禅師様は説かれます。いつの時代でも、どんな場所でも、「三宝帰依」ができるならば、必ず心の中の苦悩から解放され、仏の悟りに近づけるというのです。

いのちは絶えれば、別のいのちに生まれ変わるというのが「輪廻(りんね)転生(てんしょう)」という仏教思想ですが、これは、いのちというものが姿形を変えながら未来永劫に生き続けるという思想です。ですから、人間の場合でもどこかで誰かが亡くなれば、別のどこかで新たないのちが誕生しているわけで、それが繰り返されるから、この世から人間が絶えたことがないのです。

そうしたいのちの永続性を道元禅師様は「生々世々」という言葉で表現していらっしゃいます。これは、「いつでも」ということです。そして、「在々処々」とは「どこでも」ということで、空間の無限な広がりを示しています。これらは三宝に帰依すれば、その功徳が時間的にも空間的にも限りなく横に広がっていくことを意味しているのです。

横だけではありません。縦にも無限の広がりを見せていくと道元禅師様はお示しになっています。それを現しているのが「積功累徳」という言葉です。三宝帰依の功徳は横に広がるだけではなく、縦にも積み重なっていくというのです。

ひたむきな三宝帰依によって、その功徳が縦横無尽に拡がっていくとき、阿耨(あのく)多羅(たら)三藐三(さんみゃくさん)菩提(ぼだい)」を成し遂げられると道元禅師様はおっしゃいます。多くの漢字が連なるために一見、難しい印象を覚える阿耨(あのく)多羅(たら)三藐三(さんみゃくさん)菩提(ぼだい)という言葉は、「悟り」を意味します。私たちがひたすら三宝帰依することによって、成仏−仏の悟りに近づけることを説いているのです。