第15回 「仏弟子証明書 その1―血脈(けちみゃく)―」

此れは是れ、仏祖正傳菩薩大戒(ぶっそしょうでんぼさつだいかい)血脈(けちみゃく)なり。
仏々祖々
(ぶつぶつそそ)
嫡々相承(てきてきそうじょう)して、我れに至る、我れ今新帰元(しんきげん)(戒名)に授く、
汝今身従
(なんじこんじんよ)
り、仏身(ぶっしん)に至るまで、頂戴護持(ちょうだいごじ)し奉るべし。


導師様から十六条戒を授かった故人様に対して、次に授けられるのは、「血脈」です。「仏祖正傳菩薩大戒の血脈」とありますが、これは、「血脈」がお釈迦様から正しく伝わる“仏弟子証明書”というべきものであるということを意味しています。

「血脈」とは、お釈迦様から伝わる(かい)のみ教えが、祖師方に相承(そうじょう)されていったことを記録したものです。「仏々祖々、嫡々相承して」とあるのが相承を意味しています。お釈迦様以降、師から弟子へ、実際にみ教えが修行されることによって、相伝わり、聖火リレーのように法の灯が絶えることなく、今日まで受け継がれてきました。そんな法の灯が今も存在していることを証明する血脈を、導師様はご自身が仏門に身を投じた際、師僧からいただきました。それが「我に至る」です。そんな血脈を「我れ今新帰元(戒名)に授く」とあります。血脈を故人様に授け、さらなる法灯の永続を願うのです。そして、導師様は十六条戒同様、自らの意思で永遠に血脈を護り、仏のみ教えと共に生かされることを願います。それが「汝今身従り、仏身に至るまで、頂戴護持し奉るべし」の意味するところです。

ちなみに、血脈は禅門において、師資相承(ししそうじょう)(師匠から弟子に仏法が受け継がれること)の際に授受される物の一つで、この他に「嗣書(ししょ)(師匠が弟子に法を受け継いだ証として授け与える系譜。お釈迦様から嫡々相承の祖師方のお名前が列記され、最後は嗣書を受けるものの名が記されている)」と「大事(だいじ)(宗意の秘奥が図示されたもの)」があり、宗門では三つを「三物(さんもつ)三脈(さんみゃく))」と呼んで、大切にしています。

中でも、葬儀の場において、故人様がいただく血脈には、お釈迦様のみ教えを相承してきた歴代の祖師方のお名前が連ねられ、それぞれが朱色(血の色)の線で結ばれています。“血”には、“血縁”という言葉があるように、後世まで続くような深くて親しい関係という意味が込められています。そんな血を表す一本の(あか)い線が、お釈迦様から祖師方へ、そして、故人様へとつながっているということは、故人様が仏弟子として、仏様たちと固い絆で結ばれ、その関係が永遠に続いていく親しく深い仲になったことを意味しているのです。お釈迦様から故人までが一本の(あか)い線で結ばれているということは、そのつながりが、どんなことがあっても切れることがない堅固なる“絆”であることの証明です。ご遺族は血脈がそうした大切な仏縁を証明するものであることを熟知しておくべきでしょう。