第21回 「世尊の願い」
仏教の開祖であるお釈迦様(世尊:お釈迦様の別称で、この世における最も尊い方の意)は、周囲の人々に対して、性別だとか、年齢だとか、家柄だとか、そうした見た目の違いで分別し、差をつけるような関わり方(差別)をすることを否定されました。そして、見た目の違いに関係なく、仏の道に向かってまっすぐに精進する者ならば、誰もが仏の生き方である「戒」を身につけ、仏さまに近づくことができるとおっしゃったのです。
すなわち、お釈迦様(世尊)は「受戒によって成仏できる」ということを一切全ての人間にお示しになったというのが、今回の一句が意味するところです。
この「一切衆生」という言葉には重要な意味が含まれているように思います。と申しますのは、ここにはお釈迦様の生き様が色濃く反映されているように感じるからです。
「一切衆生」とは、過去・現在・未来の三世に渡って、この世に存在する全てを指すのですが、世尊であるお釈迦様は80年のご生涯の中で、「この世のすべてのいのちを救わん」と一切衆生に温かい眼差しを向けられたと共に、差別せず、和合しながら関わっていきたいと願ってこられたのです。
一切衆生の成仏を願った開祖・お釈迦様―我々にとって智者たる世尊が我々に「欣求(願い求めること)」してきたことを的確に捉え、限りあるいのち、少しでもお釈迦様のお悟りに近づけるような日々を過ごしていきたいものです。