第27回  「発菩提心(ほつぼだいしん) ―“悟りを得る”とは―」

是れ発菩提心(ほつぼだいしん)なり


今から約2600年前の12月8日の明け方、お釈迦様は坐禅修行によって、成仏得道(じょうぶつとくどう)(仏と成り、道を得ること)なさいました。お釈迦様が悟りを得た瞬間です。

「悟りを得た」―それは具体的にはどういうことなのでしょうか?―

私たちの周りには人間、動物といった、いのちある存在のみならず、モノ始め、道端に転がっている石ころ、道路の片隅にひっそりと咲いている一本の名も知らぬ草花といった無生物など、様々な存在があります。自分がそうした存在とつながっていることを明確に意識することが悟りの原点です。

その上で、それら一つ一つの存在に対して、自分の好き嫌いに捉われることなく、全ての存在に価値を見出すことができるようになると共に、どういう関わり方をしていけばいいのかを体得したというのが、「悟りを得た」ということです。それは言い換えれば、自分があらゆる存在の価値を見出し、平等に接することができる力があることに気づかされたと見ることもできます。

これまで自分の中に意識することさえなかった自分の尊い姿を発見できたことを、道元禅師様は「発菩提心」とおっしゃいました。菩提心というのが、自分の中に眠る尊い姿や心のことであり、そうした菩提心を起こして日々を過ごしていくのが「発菩提心」です。

修証義ではここで初めて「菩提心」という言葉が出てきましたが、私たち一人一人が、自分の周囲の存在とのつながりに気づき、あるべき関わり方を実現していきたいものです。その具体的な方法に関しては、この後、第4章にて触れられていきます。