第24回 「内諷経(うちふぎん)

昔は故人様の自宅や菩提寺で行われていた葬祭も、近年は、その大半が葬儀社の会館で営まれるようになりました。そこでは、ご遺体を棺に納め、きれいな花で装飾された祭壇に位牌や遺影を安置し、供物をお供えして、読経や焼香による供養が行われます。

かつての葬祭は、「剃髪(ていはつ)(おかみそり)」や「授戒(じゅかい)」、「入龕諷経(にゅうがんふぎん)」などの儀式は、自宅や菩提寺において営まれ、その後に、棺にお納めされた故人様を、その縁者が葬列を組んで、葬祭場にお送りしていました。すなわち、会場を変え、時間をかけながら、葬祭は営まれていたのです。それが、近年は葬儀会館一箇所で葬祭にまつわる全ての儀式を執り行うことができるようになりました。参列者は移動する必要もなければ、以前ほど時間を割く必要もなくなりました。それも時代の流れの為せる業なのでしょう。

かつての葬祭で言えば、自宅や菩提寺で営まれていたご遺体を棺にお納めし、葬祭場にお送りするまでの読経供養を「内諷経(うちふぎん)」と申します。これは、葬列が出発するまでに自宅にて行われる法要で、「入龕諷経(にゅうかんふぎん)」、「大夜念誦(たいやねんじゅ)十仏名(じゅうぶつみょう)回向(えこう)」、「挙龕念誦(こがんねんじゅ)」が該当します。

この内諷経の終わりが儀式の中盤に差し掛かるところで、時間的には、ちょうど開式から20分~30分くらい経ったところです。「内諷経」までの各種儀式は、同じようなお経が繰り返されることもあり、長々と同じようなことを繰り返しているような印象を受けますが、それぞれの儀式には、それぞれの意味があります(下記一覧表参照)。どの故人様も、この娑婆世界で一生懸命に生き、その足跡を残してこられた方々ばかりです。だからこそ、その成仏(仏に成ること)を願って、懇ろにお勤めするのです。

NO 儀式名 読み方 内容
剃髪 ていはつ 髭や髪を剃り落す儀式。出家の姿になり、憍慢(きょうまん)の心や三毒煩悩(貪り・瞋り・愚かさ)を断つこと。
授戒 じゅかい 導師様から仏の戒法を授かる儀式。
入龕諷経 にゅうがんふぎん ご遺体を(がん)(棺)にお納めして、読経供養させていただく儀式。
大夜念誦・十仏名・回向 たいやねんじゅ・じゅうぶつみょう・えこう 大夜(たいや)(葬祭前夜)という再び帰らない夜を想定し、その場面において、故人様の棺前で読経供養させていただく儀式。
挙龕念誦 こがんねんじゅ 挙龕(こがん)(出棺)に際して、読経供養させていただく儀式。