第8回 「菩薩の願い」



衆生(しゅじょう)利益(りやく)すというは、四枚(しまい)般若(はんにゃ)あり。
一つには布施(ふせ)。二つには愛語(あいご)。三つには利行(りぎょう)。四つには同事(どうじ)
()(すなわ)薩埵(さった)行願(ぎょうがん)なり


ここでは、人々を救い、みんなが仲良く、幸せになれるための4つの方法(四枚の般若)とは何かが端的に示されます。その具体的な内容は、この後、詳細に示されていきます。「般若」とは、「智慧(ちえ)」のことです。悟りを得た仏様(如来様)のものの見方や捉え方のことです。

此岸(しがん)(我々が生かされている人間世界)に生きる我々が迷うのは、煩悩をコントロールする力が足りず、自分の考えや都合を優先させて、真理を素直に受け入れようとしないからに他なりません。自分に与えられたもの以上に求めること、思い通りにならないことに怒りの感情を示し、愚痴をこぼすようなことは、自分自身が仏の道から外れていくだけではなく、周囲にも不快な思いをさせていくのです。

そんな我々に菩薩様は「四枚の般若」を提示して、我々凡夫が自らの中に生じた三毒煩悩(さんどくぼんのう)(むさぼ)りの心、怒りの心、この世の真実を認めようとしないこと)を調整し、少しでも如来様のお悟りに近づいていけるよう、導いてくださるのです。

―そんな煩悩を調整し、みんなが仲良く、幸せになれるための四つの方法とは?―

  1. 布施(みんなが喜び、幸せになれるものを、お互いにやり取りし合うこと)

  2. 愛語(みんなが安心し、心穏やかに過ごせるような言葉をやり取りし合うこと)

  3. 利行(みんなが安心し、幸せに暮らせるような行いをやり取りし合うこと)

  4. 同事(自分の好みや都合で、相手によって態度を変えず、みんなで仲良く暮らす)


「これが菩薩様が成し遂げんとする誓願である」というのが「薩埵の行願」の意味するところです。その願いを私たちも受け止め、日々の行いに反映させていくことは、もはや言うまでもないことです。