30回 「焼香の起源」

告別式も佳境に入ると、ご遺族・ご親族様始め、会葬者の「焼香」が行われます。僧侶が読経する中、司会者(葬儀社担当者)の案内に従い、喪主様から順次、仏前に出て、別れの香を焚きます。

そもそも、焼香はお釈迦様の時代、祇園精舎を建立した富豪・須達多(すだった)がお釈迦様をご招待するに当たり、終夜に渡って高台で香木を訓じたという故事に由来するものです。

そんなお香の起源ですが、どうやら古代エジプトにおける宗教儀礼にまで遡るようです。そして、香を用いる習慣が、インドに伝わった際、特に暑い時期の体臭予防のための生活必需品として用いられたそうです。

そんな香が次第に、仏教にも取り入れられるようになっていくわけですが、お釈迦様はご自分の遺体を香木で覆ってから荼毘に付してほしいと遺言されたとの言い伝えもあります。そうした亡き人々を、香の香りをいただきながら、清浄なる仏となることを願って供養し、お見送り申し上げると共に、供養の場をもお清めするというのが、焼香の目的なのです。すなわち、香を焚く際には、故人様の確かな成仏を願い、遺されたご遺族を見守ってくださる“守り仏”となっていただくことを願うことを意識しておくことが大切であるということなのです。

そうした香の起源を踏まえつつ、故人様の成仏を願ってを込めて、ご焼香を捧げていただくことになりますが、実際の焼香場面では、周囲の参詣者への気遣いも忘れずに、執り行っていただけたらと思います。