我がいのちと向き合う 
−コロナが与えてくれた機縁−

それにしても、正体不明の未知なる存在であるがゆえに、不安を掻き立てられる新型コロナウイルス(COVID19)ですが、もしも、「手洗い等の自己防衛策を取り、冷静に対処してたのに、感染して、万が一のことが起こったらどうする?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それは、“新型コロナ”に限ったことではありません。

そもそも私たち皆が“明日はどうなるかわからないいのち”を生かされているのです。もしかしたら、1時間後に大地震が発生して、亡くなっているかもしれない、事故に遭っているかもしれません。冷静に考えれば、私たちはそんな露のごとき“はかないいのち”を生かされているのです。

だからこそ、お釈迦様は始め仏教の祖師方は「一日一日を大切に生きていこう」とおっしゃっておられるのです。そして、その方法として「遠離」を含む「八大人覚」が示されているのです。

新型コロナウイルスの件は、別の側面から見れば、「私たちが自分たちのいのちと向き合っていく大切な機会をいただいている」と捉えることだってできます。世情不安な世の中を生き抜いていく上で、こうした前向きに生きていく視点を持ち合わせたいものです。

私たちが生きていくということは、一人ではなく、様々ないのちと関わり合っていくことは避けられません。そうした関わりの中で、世間に流され、自分の身心を乱すのではなく、乱れそうになったら、一旦、世間と距離を置き、自分を調えて、再び世間と関わっていく―そうした「遠離」という生き方を歩んでいきたいものです。
             【おわり】