「“この世のしくみ”を知る」 

我々がいのちをいただき、生活している此岸(この世)のしくみについて、仏教では下記のように説かれています。

(1) 諸行無常(しょぎょうむじょう) 無縁社会という言葉が登場して久しいですが、私たちは一人で生きていると思ったら大間違いです。周囲を見渡せば、人やモノ、草木に動物、空に浮かぶ太陽や雲など、自分とは異種の様々な存在と関わり合い、支え合って生かされていることに気づかされます。これを「衆縁和合(しゅうえんわごう)」と申しますが、そうした周囲との関わりの一つに“時間との関わり”があります。時間との関わり中で、全ての存在が変化します。生まれたいのちは成長しながら、やがては老い、病気にかかり、最期は死を迎えます。それは誰も避けられません。それが諸行無常です。
平成30年の冬は全国的に記録的な大雪となりました。中には、大雪に怒りをぶつけている人もいらっしゃったようですが、冬になれば、気温が下がり、多かれ少なかれ雪が降るのです。雪に怒っても仕方ないのです。そして、寒い冬もいつしか暖かい春が訪れるときがやって来るのです。
(2) 諸法無我(しょほうむが) 自分とは異種の存在と関わっていかねばならないということは、自分の思い通りにならないことが起こって当然なのです。私たちは思い通りにならなければ、ついつい怒りの感情を露わにしてしまうのですが、それがこの世の仕組みであると受け止め、心安らかに過ごしていきたいものです。
(3) 一切皆苦(いっさいかいく) 時間の流れの中で、受け入れがたい変化を受け止めていかねばならぬ苦しみ。関わり合いになりたくない存在ともかかわっていかねばならぬ苦しみ。此岸で生きていく上で、そうした苦しみからは逃れることができないのです。
お釈迦様の処女説法と呼ばれる「四諦八正道(したいはっしょうどう)」の中でも、この世は苦しみの世界であることが最初に説かれています。そのことを受け止め、苦しみの中でいかに前向きに物事を捉えていくか、明るい気持ちで毎日を過ごしていくかを考え、行動に移していくとき、私たちの身心が安らかになり、仏のお悟りに近づいていくのです。これぞ、「涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」であり、こうして此岸と彼岸が一体になっていくのです。 
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