無常を観ずる |
政府が“新型コロナウイルス”(以下、コロナ)による大きな打撃を受けた観光業界を支援する「Go Toトラベル」が開始された7月22日、JR西日本は旧盆期間(8月7日〜17日)における北陸新幹線の指定席予約状況が前年同期比82%減にとどまっていることを発表しました。状況は他の新幹線でも似たようなものだそうですが、この日、国内における一日当たりのコロナの感染者が795人を記録し、その後も深刻な状況が続いていることを思えば、今年のお盆はゴールデンウィーク同様、帰省や外出はできるだけ自粛し、「おうちでお盆」もやむを得ないという気がしております。 コロナの影響を受けて、“新しい生活様式”始め、“with コロナ”ということが叫ばれていますが、こうした状況下で、幾度も「いのちのはかなさ」というものを感じました。たとえば、志村けんさんや岡江久美子さんといった、つい先日までテレビでお元気なお姿を拝見していた方々の急な訃報に私たちは驚き、悲しみの涙を流しました。それはコロナに限ったことではありません。病気や事故、自然災害も同じです。先日、通夜・葬儀をつとめさせていただいた檀信徒の方は、生前、公職に就いて、世の中のために働くと共に、サッカーを人生の糧としてきた方でしたが、悪病に侵され、1年間の闘病生活の末、旅立たれました。九州の集中豪雨の記憶も新しい中、我々は、たとえ元気で健康に過ごしていたとしても、そうした他者の力を受けて、いつ、どうなるかわからぬいのちを生かされているのです。そのことを改めて再認識させていただくのです。 時間という存在との関わりの中で、生まれたいのちはすくすくと成長していきますが、その反面で年齢を重ね、病にかかるなどして、最期には死を迎えます。仏教ではそれを「諸行無常」といい、そんな事実を受け止めながら毎日を過ごすことによって、あらゆる苦悩から救われることができると説いています。まずは、この「諸行無常」をしっかりと我が事として受け止めていきたいものです。それが「無常を観ずる」ということです。それは万事が自分の思い通りにならないことを認めるのであり、苦しみも伴います。しかし、そんな世界に私たちは生かされているのです。そのことに少しでも早く気づき、認めることができたならば、私たちは何事にも動じることなく、心安らかに過ごせるようになっていくのです。 仏と共に生きていくことで、恐怖や不安で足元がおぼつかない毎日を過ごす我々が、自らの身心を調え、穏やかな気持ちで過ごすことができます。“with コロナ”の新しい時代のお盆がそのきっかけになることを願います。そして、それが今の自分を存在させてくださっているご先祖様始め、周囲を安心させることにつながっていくのです。 |