第9回「道に精進する ―石川県から出た“すごい人”―

周りを見渡してみると、「すごいなぁ」と感じる人はたくさんいらっしゃいます。そうした人々をよくよく観察させていただくと、共通するものが一点あることに気づかされます。それは「各々の分野で精進している」ということです。「精進」とは、「精(混じりけのない純粋な状態)」で、目標に向かって「進む」ことです。

「すごい人」というのは、たとえば、男性だからすごいとか、年齢を重ねているからすごいとか、特定のポイントだけを取り上げて、評価できるものではありません。男女の性差なく、年齢の老若なくで、見た目で簡単に判断すべきものではないのです。自身が選んだ道を真剣に歩み続けていて、そのうちに、世間に感動や喜びを提供している人―それが「すごい人」なのです。

仏教の開祖・お釈迦様は坐禅を通じて、悟りの道を歩み続け、苦悩する多くの人々に救いの手を差し伸べてこられました。そんなお釈迦様の歩んだ道を受け継ぎ、同じように歩み続けられたのが道元様や瑩山様といった各仏教宗派の開祖様や祖師方です。そうした方々は、まさに仏教という分野で精進してこられた「すごい人」たちなのです。そうした祖師方と同じように、芸術の世界で精進を重ね、人間国宝になられた芸術家の方。科学の世界で研究を重ね、人類を救済するものを発見した科学者の方。他にも様々な分野で精進し、その成果で世間に救いの手を差し伸べているすごい人は大勢いらっしゃいます。

そんな中で、今回は、最近、「すごいなぁ」と感じる若い女優さんにスポットを当ててみたいと思います。石川県出身で、地元紙・北國新聞のCMでもお馴染の浜辺美波さんです。近年、躍進がすさまじく、知名度も好感度も急上昇中です。現在、公開中の映画「思い、思われ、ふり、ふられ」や、テレビドラマ「私たちはどうかしている」(毎週水曜日午後10時・日本テレビ系)での、役になりきった演技はレベルが高く、惹きつけられるものがあります。「私たち〜」は視聴率の面では高くはないとは言うものの、Twitterでは「#私たちはどうかしている」というハッシュタグがトレンド入りし、多くの人が注目し、次週の放送を楽しみにしていることが伺えます。こうした状況を見るに、改めてドラマというのは、視聴率という見た目の数字だけで、作品の良し悪しが判断できるものではないことに気づかされると共に、そうした見た目の情報に捉われ、一喜一憂する自身の見識の狭さを猛省するばかりです。(ドラマの内容は公式サイトをご覧ください)

「私たち〜」は、昭和にヒットした懐かしのドラマを連想させる内容で、ドロドロとした人間関係が描かれますが、その中で、浜辺さんは役になりきり、心情の変化を全身で見事に演じ切ると共に、和服もきれいに着こなしたり、ときには、大物の先輩俳優相手に堂々とした演技を見せたりと、久しぶりにパワー溢れる若い女優さんに出逢えたような気がします。浜辺さんの精進するお姿に、エネルギーをいただくと共に、同じ石川県民として応援させていただきたいと思っています。こうした若い方の精進する姿は、特に昨今のコロナ禍に苦悩する中で、多くの人々に元気を与えていくことでしょう。

そんな浜辺さんが、去る8月29日に20歳のお誕生日を迎えられました。多くの人からお祝いのメッセージをいただいた浜辺さんは「20歳を迎えることができました。たくさんの方に支えていただき応援していただき幸せすぎる今です。」とその心境をTwitterで綴っていらっしゃいます。どんなに苦しくて辛い毎日を送っていても、誕生日くらいは幸せを感じながら過ごしたいと誰もが願っているはずです。浜辺さんは、まさに幸せな誕生日を迎えることができたことが、Twitterのコメントから伺い知ることができます。

私自身、20歳の誕生日を迎えた頃を振り返ると、浜辺さんのように幸せを感じ、周囲への感謝を忘れぬ素晴らしいコメントを出すことはできませんでした。浜辺さんの20歳と私の20歳に、大きな隔たりを覚えると共に、何が隔たりを生むのかを考えてしまいました。そして、その答えを浜辺さんが発していることに気づきました。それは「道に精進すること」なのです。道に精進している人に、善き人が集います。善き人々は、道に精進する人を支え、励ましてくれます。なぜなら、道に精進する人は、世間の苦悩する人々を励まし、元気づけてくれているからです。20歳の若き女優である浜辺さんは、今まさに、そういう存在なのです。そして、20歳だった私は、大学での学業を怠り、遊び惚けていました。浜辺さんのような「道に精進する人」ではなかったのです。それが隔たりの原因だったことに気づかせていただいたのです。

こうした「道に精進する生き方」は、仏教の開祖であるお釈迦様の生き方そのものです。私たちも浜辺さんのように、少しでも、自分たちがご縁をいただいた分野で一生懸命、精進し、世間の闇を照らす光明を発せられるような毎日を過ごしていきたいものです。