万事は変化していく「諸行無常」、全てが自分の思い通りにならぬ「諸法無我」、それゆえ、私たちの生かされている人間世界は苦しみの連続であるという「一切皆苦」。これらは私たち人間が生かされている世界における永遠不変の真理です。
そうした変えようもない真理に対して、「苦しいことは避けたい」などと自分に都合のいい私見(自分の見方・考え方)を混ぜて捉えてしまうのが、私たち人間です。しかし、それでは、いつまでも真理に気づくことができないばかりか、人生の苦しみから逃れることはできません。「真理を受け入れる視点」を持たない限りは、私たちには安楽の人生は訪れることはないのです。
そうした「真理を受け入れる視点」を持つことによって、安楽の人生を送ることを「涅槃寂静」と申します。「涅槃」は三毒煩悩(貪り・瞋り・愚かさ)の火が消えた状態を意味し、私たちが自分の中に発生した三毒煩悩を調整して、表出させないようにしていくことを意味しています。そうした「心の調整」や真実を受け止めるための視点の変更という「生き方の調整」によって、寂静なる心安らかな境地が訪れるというのが「涅槃寂静」です。
自分の私見を絶対視するのではなく、真理を受け入れる視点さえ持てれば、自分の人生がよい方向に向かって大きく変化していくことでしょう。すなわち、自分ではなく、真理という大きな存在に身を委ねていくのです。それが「帰依」ということなのです。日常生活の中で、この世の真理である「諸行無常」・「諸法無我」・「一切皆苦」・「涅槃寂静」の4つ(四法印)を意識し、身心共々に寂静なる毎日を過ごしていただくことを願っています。 【おわり】
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