「“七堂人体表層図”に学ぶお寺の伽藍」 

右の「七堂人体表層図」をご覧ください。禅宗寺院では①法堂(はっとう)僧堂(そうどう)③仏殿④東司(とうす)⑤山門⑥庫院(くいん)➆浴室の七つの建物を総称して「七堂伽藍(しちどうがらん)」と申しております。どの建物もお寺にとって重要ですが、中でも人体の頭部や心臓部に位置する①法堂③仏殿は重要で、たいていは両者が一体化し、「本堂」と呼ばれる形態を採ることが多いです。

この7つの中でも、理解が難しいのは庫院(庫裏(くり))です。と申しますのは、庫院には「住職やその家族の住まい・生活の場」というイメージが強いからです。つまり、“庫院=住職家族の家”という理解が一般的であるということです。

一般檀信徒の皆様がご自分の家を建てるときには、たいていは住宅ローンを組み、一生懸命働きながら、ローンを払って、家を建てます。しかし、お寺の庫院の場合、建設費は住職さんも費用は出しますが、檀信徒からの浄財に頼る部分が大きいのも事実です。そこが檀信徒の皆様に庫裏建設のご理解・ご協力をいただく上で難しい面でもあります。

しかし、その半面で庫院がなければ、お寺に住職が住む場所がなく、お寺が無人となってしまいます。こうした事情を鑑みながら、どんな庫院が求められるのかを考えていったとき、質素でいて、お寺の空気に溶け込んだ庫院というのが、庫院における一つのモデルになるのではないかと思います。

寺院の建立や伽藍復興において、お寺らしさの維持することを大前提として、檀信徒の皆様とも対話を重ねながら、進めていくことが大切であることを今一度、確認しておきたいところです。        【第2回へ】