第59回「坐禅の環境・坐禅の条件 その2」

昔人金剛座(せきじんこんごうざ)に坐し、
盤石
(ばんじゃく)
の上に坐するの蹤跡(しょうせき)有りと(いえど)亦坐物有(またざもつあ)らざること無し、
坐処
(ざしょ)
(まさ)に昼は明らかならず夜は暗からず、冬は(だん)に夏は(れい)なるべし、
()
()の術なり。


お釈迦様から伝わりし坐禅に帰依し、修行してこられた古の祖師方や僧は「金剛座」だとか、「盤石」といった大きくてどっしりとした場所で坐禅に身を投じ、身心を調えなさってきたわけですが、そこでも「吉祥草(きちじょうそう)」などを敷いて坐禅をなさったと瑩山禅師様はおっしゃっています。昨今は、坐禅の際には「坐蒲」という縁系の座布団を用いていますが、いずれにしても、平坦な場所で坐禅をしても、上手く坐禅をすることはできず、とても身心を調えるなどということは不可能です。必ず坐蒲などの座布団を用いて、少し高さを作ることが必須です。

坐禅をする場所について、前回は「浄室宜(じょうしつよろ)し」とか、「打坐(たざ)(ところ)を清潔にせよ」など、静かで清潔であることが、その条件であると瑩山禅師様はお示しになっていました。それに加えて、今回は、日中は明るすぎず、夜は暗すぎず、冬季は温かく、夏季は涼しくすることが坐禅の条件として提示されています。仏教は「中道(ちゅうどう)」の教えであると言われますが、そうした偏らず、やり過ぎずの観点からいけば、時間の流れや季節の変化を踏まえながら、ほど良い快適な環境の中で、坐禅に身を投じていくことができれば、身心が落ち着き、調っていくということなのです。

ちなみに、こうした坐禅の条件は道元禅師様も先に「普勧坐禅儀」の中でお示しになっています。(詳しくはこちらをご覧ください)お釈迦様の坐禅がそっくりそのまま道元禅師様に伝わり、さらに、確実に瑩山禅師様にも伝わっているのです。