菩提薩埵四摂法(ぼだいさったししょうぼう)
-“布施・愛語・利行・同事”の生き方-

「同事」とは、「同じ事」とあるように、自分と周囲が“(ひとつ)”になることを目指した行いです。これは、道元禅師様がお示しになった「菩提薩埵四摂法」の一つで、他に「布施」・「愛語」・「利行」があります。

「布施」というと、一般的には、「仏事供養をしてもらった僧侶に支払う謝礼」という意味で使われていますが,
この言葉の元来の意味は「貪らざるなり・へつらわざるなり」とあるように、本来のあるべき周囲との関わり方を説いたものなのです。すなわち、仏の周囲との関わり方です。前段にもありましたように、私たちは周囲の様々な存在と関わり合い、支え合って生かされています。そうした周囲の存在に対して、どんなモノも、我が物を扱うかのごとく大切に扱うことが「貪らざるなり」という「布施」です。また、人と関わる際に、自分より目上の者だからと平身低頭に接していたのが、目下の者だと思った瞬間に、ぞんざいな関わり方をするといった、相手によって関わり方を変えるような差別的な接し方を慎むことが、「へちらわざるなり」の「布施」なのです。

次に「愛語」とあるのは、「相手と一つになる言葉」のことで、仏が発する言葉です。相手を思いやり、相手の身になった言葉を発することを心がけていきたいものです。

そして、「利行」とあるのは、「相手と一つになる行い」、すなわち、仏が提示する行いです。

-2007年(平成19年)3月25日(日)午前9時41分58秒-
マグニチュード6.9、最大震度6強を記録した地震が能登半島で発生。一人の方がお亡くなりになりました。また、輪島市にある曹洞宗・大本山總持寺祖院も甚大な被害を受けました。この地震は、後に、「能登半島地震」と命名されましたが、これを受けて、被災地を支援をしたいと、全国各地から大勢の方が能登半島に集い、ボランティア活動に汗を流しました。当時、私も曹洞宗石川県青年会の一会員として、幾度も能登半島に通わせていただきましたが、この活動を通じて、私は大切なことを学ばせていただきました。それは「ボランティア活動にとって、被災者の思いや願いを受け止め、それに応じた活動をすることが大切である」ということです。当時の私は、少しでも早い復旧作業につなげるべく、一日も早く被災された家屋等の瓦礫を撤去する肉体作業こそがボランティアだと思っていました。しかし、ボランティアというのは、そうした限定的なものではないのです。被災者が何を願い、何を望んでいるのかを、丁寧に聞き取った上で、それに応じた行いを提示していくのがボランティアなのです。たとえ、自分の思っていたことが、被災者の願い・要望とかけ離れたものであったとしても、自分の思い・考えなど、即座に捨てて、被災者と“同”になることを心がけて、言動を提示していくのが、ボランティアなのです。そして、それが「利行」なのです。

こうした「“同”になる」ということを基軸として、我々一人一人が日常生活において、布施・愛語・利行・同事の「菩提薩埵四摂法」の生き方を心がけていくとき、今、世界中で発生している、争いや差別といった様々な問題が解決の方向に向かっていくような気がいたします。   【第4回へ】