次に、令和3年度「曹洞宗布教教化方針」をご紹介させていただきます。今年度の方針は、コロナ禍の世情を色濃く反映した内容ではないかという気がします。その一つが「オンラインによる坐禅会」です。オンラインというのは、人間同士が直接、対面してコミュニケーションを取るのではなく、パソコンやスマートフォン、タブレット等の機器を用いて画面上でコミュニケーションを取る方法です。こうした新しい方法に触れたとき、これまでの対面式の法話にこだわり、この先、従来の対面式による法話はなくなるのかと意気消沈していた自分を大いに反省いたしました。
考えてみれば、いつの時代も、これまでの常識が通用しなくなったために、新たな方法を模索し、一生懸命に形にして、それを次世代の人に受け継いでいくという苦労を背負った方々は大勢いらっしゃいました。私たちは、そうした方々の恩恵を受けて、今を生かされているのでしょう。そして、今、次は私たちが、そうした先人たちのように、次世代の人々のために、よりよい社会を遺すという重責を担う番なのかもしれません。大切なことは、どんな困難があっても、諦めることなく、それを乗り越えて、道を歩み続けていくことです。それが「精進」ということなのです。
もう一つは、「SDGsの推進」です。これは、2015年(平成27年)の国連サミットにおいて、国連加盟国193カ国の全会一致で採択された「持続可能な開発目標」というものです。「S」は「サスティナブル(持続可能)」、「D」は「ディベロップメント(開発)」、「G」は「ゴール(目標)」と、それぞれの単語の頭文字を取ったものです。世界各地の様々な人々の声に耳を傾けながら、2030年を目標として、世界的な視野で掲げられた17個の目標(貧困や飢餓の解消、差別の撤廃、環境の保全 他)を解決してこうというもので、「誰一人として取り残されない」、「一番取り残されている人を最優先に」というのが、最大のポイントです。
何だか、ハイレベルで、遠い世界のことのようにも聞こえたりしますが、決して、そうではありません。ポイントは“持続可能”という部分です。自分たちの日常生活の範囲内で、また、自分たちのできる範囲内でいいのです。周囲の様々ないのちや自然環境に心を配り、目を向けていく姿勢を持つことが「SDGs」における大切な視点なのです。「SDGs」が掲げる17の目標は、仏教にも通ずると共に、私たちが世界中のあらゆる存在と“同になる”行いでもあるのです。是非、日常生活の中で、意識的に取り入れてみたいものです。 【第5回へ】
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