第1回 愛語といふは 
-共に仏に近づく言葉の交わし合い-

「愛語といふは、衆生をみるにまづ慈愛の心をおこし、顧愛の言語(ごんご)をほどこすなり。おほよそ暴悪の言語なきなり」(正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)菩提薩埵四摂法(ぼだいさったししょうぼう)より)

周囲の存在に対する正しい言葉の使い方を説くのが「愛語」です。「おほよそ暴悪の言語なきなり」とあるように、暴言は用いない。大声での罵声やハラスメントはアウトです。言葉を発する側もいただく側も共に救われ、仏のお悟りに近づけるような言葉を発しながらコミュニケーションを取っていくことが愛語なのです。そうした愛語を施し合っていくためには、自らの心の中を穏やかな状態に保つよう、調えておく必要性が出てきます。

道元禅師様はおっしゃいます。皆が愛語を好めば愛語は広がり、目に見えるような形で飛び交うようになる。そんな愛語を生きている間は勿論のこと、死んでからも使うように心がけよう―そこまで道元禅師様はおっしゃっています。いかに愛語によコミュニケーションが大切かということです。

さらに道元禅師様は続けます。敵同士の対立を解消し、皆が仲良くしていくための基本は愛語である。愛語を直接聞くこともうれしいが、自分が知らないところで、誰かが自分に対する愛語を発していたことを知ったときのうれしさは、この上ないものである―陰で悪口を言われているのを知れば、悲しい気持ちになりますが、愛語であれば、うれしさも一入(ひとしお)、こうして愛語によって、言葉を発する側も受け取る側も共に救われ、仏に近づいていくのです。

令和4年11月14日、アメリカ中間選挙で多数派を維持して勝利を収めた与党民主党のバイデン大統領が中国の習近平国家主席と初の対面会談を行ったことが報じられました。G20サミットに参加すべくインドネシアのバリ島を訪問、笑顔で握手を交わす両氏の会談は3時間にも及んだとのこと。そんなお二人の姿にホッと安心感を覚えると共に、愛語を通じての意思疎通によって、世界平和の到来を切に願う自分がいました。
【第2回】