かけがえのない地球に(3)



地球環境の変動に関しては、この地球上に人類が存在すること自体が悪で有ると言えるかも知れません。
人類以外の生物、例えば象やライオンがどんなに生息数が増えようが、気候が暑かろうがエアコンを使うわけではありません。
ゴリラやチンパンジーが、疲れたからといって車で出かける訳ではないし、ステーキを食べビールを飲むわけでは有りません。
ましてや安易なTV番組に出てくる「大食い大会」などという馬鹿なことはしません。

キリンやシマウマの生息数が5倍、10倍に増えたとしても、彼らが食料を得るために森林を伐採し開墾するわけではありません。

人類だけが個体数を無制限に増殖させ、生存のために必要がない部分の生活レベルを向上するために地球環境を無視した行動をとっているのです。その結果、具体的にどのような事象が起こっているのでしょうか。

環境要因と気候の変動:

化石燃料の燃焼による世界炭素排出量   5億トン(1900年)→63億トン(2000年)    2000年の排出量が世界人口と似ているのは偶然の一致でしょうか。とすれば2050年には、40%増の100億トンになるのかも?

大気中炭酸ガス濃度  280ppm(1760年)→320ppm(1960年) +40ppm/200年間
                         →370ppm(2000年) +50ppm/40年間
地表の平均気温     13.8度C(1860年)→14度C(1960年)  +0.2度/100年間
                           →14.4度C(2000年) +0.4度/40年間 

気温の変動:

もし21世紀末までに炭酸ガスの濃度が産業革命の始まった1760年以前のレベルから倍増し600ppmに近づくことがあるとすれば、炭山ガス濃度の増加による気温上昇はより激烈な気象事象を引き起こす可能性があるのです。
現在でも既に、北半球の内陸部ではしばしば局地的で極端な気温上昇が見られます。今年の夏、フランス、スペイン、イタリアが猛暑に襲われ、フランスでは8月までに死者約14,000人に達し、農業部門にも多大な被害が出ています。
また、8月13日の朝日新聞朝刊は「都市構造が生んだ熱帯夜」という見出しで8月上旬の東京の平均気温29.2度と伝えています。これはマニラの最も暑い5月の平均気温29.4度に匹敵します。

このままでいけば2030年頃の東京の夕方の気温は43度を超え、人間の生存にとって危機的状況になる恐れがあると報道してます。

氷河の溶解:

気温の上昇は極地、山岳地帯の氷の溶解を引き起こします。北極海氷はここ30年で40%薄くなり、アルプス山脈では氷河の量が1850年から半減し50年後には殆ど消滅すると予測されています。ロッキー山脈、ヒマラヤ山脈、天山山脈、コーカサス山脈なども消滅寸前の危機的状況にあります。グリーンランド、南極大陸も同じような危機に面してます。

河川の水量低下:

気候変動により河川の水量が低下しています。河川の水量は供給量の低下に加えて、人口増加による飲料用水の増加、工業・農業・酪農用水の増加によりその水が海まで届かない河川が増えてます。アメリカのコロラド川、中国の黄河、中央アジアのアムダリア川。今後もこのような河川が増えるものと予測されており、水資源の確保と共に、かっこくにとって重要な問題になってきています。特に河川のルートが複数の国にまたがる場合は、更に複雑な問題を抱えることになります。エネルギーに加えて、水・食料をめぐる紛争が、激しくなることが心配です。

ご存じのように、畜産物中心の食事は穀物中心の食事の4倍の水が必要です。人口増に加えて、生活レベルの向上により更に多くの水資源が必要となります。更に、地下水のくみ上げによる地下水位の低下も問題になりつつあります。
日本は、水資源に恵まれていると思われていますが、穀物も畜産もかなりの割合で輸入に頼っており、間接的に大量の水を輸入していることになるのです。

海水面の上昇:

氷山・氷河の溶解の結果、河川の水量が低下し海水面が上昇することになります。海水面は、20世紀の100年間で10〜20センチ上昇しました。この値は20世紀以前の2000年間に上昇した値の50%に当たります。現在の速さで地球の平均気温が上昇を続けるとしたら、21世紀中に海面は1メートル上昇する可能性があります。

この結果、平均的な海岸線は1500メートル後退し、例えば上海では1/3が水没することになります。海水面の上昇は、世界の穀倉地帯を直撃し生産量が半減する恐れが有ります。その結果、決して少なくない飢餓人口のレベルを更に押し上げることにつながります。
アメリカでは、大西洋中部諸州とメキシコ湾岸諸州で広範な水没が起こり、50年に一度の高潮が起これば、ワシントンの国会議事堂周辺が水にのまれる状況になり、日本では400万人が影響を受け移住を余儀なくされることが予想されます。

海水温の上昇:

また海水温の上昇による影響も見逃せません。インド洋のサイクロン、アジアの台風、アメリカ諸国のハリケーンは毎年巨大になり、破壊力を増してきています。局地的な豪雨も毎年スケールが大きくなり、被害も大きくなっています。昨年はヨーロッパ各地で被害が出ましたが、今年もインドのマハラシュトラ州、新疆ウイグル自治区での集中豪雨によりかなりの人的・物的被害が出ています。

システムの再構築:

スペースシャトル「ディスカーバリー」のコリンズ船長は、8月4日国際宇宙ステーションと東京の首相官邸を結んだ「宇宙対談」で宇宙飛行士としての立場から環境保護の大切さを訴えました。「宇宙からみた地球の大気圏は卵の殻のように薄くてもろい。だから大切に保護しなければならない」と言ってます。ディスカバリーが地球に帰還した日、NASAから送られてくる船外活動の映像を見ていて、宇宙から見た地球の美しさに感動するとともにコリンズ船長の言葉の意味を実感しました。我々人類は全員が、地球上の全生物の生存と持続できる将来を保障するために環境を保持する義務があるのです。このために現在の生活についての考え方を見直し社会全体のシステムを再構築する必要があります。経済中心の活動から環境レベル維持中心の活動へ。

では、どのような再構築が考えられるのでしょうか。

私たちが具体的に出来ること

「一人ひとりの地球温暖化対策」  環境省HPより(全部で10項目あります。今回は、その内2項目を紹介します)

家庭で全10項目の取り組みを行うと、わが国の温室効果ガス排出量(1990年)を2.8%削減できる。
(京都議定書の日本の削減目標は6%です。但し、その後のデーターで8%増となっていますので合計14%の削減が必要となります)

No. 取り組み例 一世帯あたりの
年間ガス削減効果
一世帯あたりの年間
排出量に対する
削減割合(%)
一世帯あたりの
年間節約効果
 備 考
1. 冷房の温度を1度高く、暖房の温度を1度低く設定する 約31kg/年 0.5% 約2000円/年 カーテンを利用して太陽光の入射を調整
2. 週2日往復8kmの車の運転を控える 約185kg/年 3.1% 約8000円/年 通勤や買い物の際にバスや鉄道、自転車を利用する

  本文の大部分のデータを、レスター・ブラウン著「エコ・エコノミー」家の光協会
                    第2章 ストレスの兆候:気候と水  から引用させてもらいました。