第3回 「人から人へ・・・」


西天東土仏祖正伝(さいてんとうどぶっそしょうでん)する所は、恭敬仏法僧(くぎょうぶっぽうそう)なり


修証義・第1章 第17回『「因果の道理」を明らめる』の中でも触れさせていただきましたが、今から2500年前にインドでお悟りを開かれたお釈迦様のお教えは、その後、達磨大師(だるまだいし)様によって中国に伝わり、そこで日本からの留学僧だった道元禅師様によって日本へと伝えられました。これが「西天東土仏祖正伝(さいてんとうどぶっそしょうでん)」するということです。

今や、その仏法はさらに広まり、欧米諸国にも伝わっています。言葉も違えば、文化だって異なるにも関わらず、仏法は海を越え、世界中に広まっていきました。これは本当に奇跡ともいうべきすごいことです。そんな奇蹟を生んだのも、“因果の道理”すなわち、“ご縁の力”によるものなのです。

しかしながら、この奇蹟が起こった理由を別の角度から見てみると、あることに気づきます。それは“仏法を世界中に広めたのは、人間である”ということです。確かに、言葉も文化も生活環境も違います。しかし、皆、同じ人間です。喜怒哀楽の感情を持った者同士なのです。だから、皆がすばらしいと感じるものならば、誰もがすばらしいと感じることができるのです。

仏法は誰が見てもすばらしいものであり、どんな人でも救える力を持っていた―だからこそ、世界中に広まっていったのです。

そんな人から人に伝わった仏法の根底にあるものは、三宝への帰依です。それが「恭敬仏法僧(くぎょうぶっぽうそう)」と表現されています。三宝帰依を根っことした仏法がインドから、中国に伝わり、そして、日本に継承され、日本から欧米諸国へと伝わっていったということです。人から人へ・・・。坐禅の実践を通じて・・・。