第27回 「秉炬と引導」
故人様の成仏を願い、手磬・太鼓・遶鈸を鳴らしながら(鼓鈸三通)、大宝楼閣(仏の世界・悟りの世界)へと故人様をお送りします。そして行われるのが「火葬」の儀です。火葬は四葬の一つで、ご遺体を焼いて、ご遺骨を葬ることです。(詳細はこちらをご覧ください)
とは言え、実際の葬儀では、このタイミングでは、まだ実際の火葬が営まれるわけではなく、導師様が“火のついた「たいまつ」”になぞらえた代用品を用いて、円を描くが如くに回し、お棺に火を点ける仕草を行います。これを「秉炬」と申します。こうした秉炬の儀の起源は、今から約2600年前の古代インドにおけるお釈迦様の時代まで遡ります。お釈迦様が父・浄飯王の葬儀において、たいまつに点火したことに端を発するそうです。そうした秉炬の儀が仏教の伝来と共に、中国や日本にも伝わってきたそうです。
秉炬に続いて行われるのが、「引導」の儀です。「引導」とは、「人を仏道に導き入れること」であり、「死者を救済すること」です。ここでは、導師様が故人様の棺前において、故人様はもちろん、ご遺族様が仏縁を育む場になることを願って、生前の功績を讃えた法語(お言葉)をお唱えになります。これを「引導法語」と申します。この「引導法語」には、故人様との惜別の意を表するという意味も込められており、言わば、導師様からの弔辞でもあるのです。
「引導法語」の後、会葬者から「弔辞」がある場合は、「弔辞」述べられます。また、場合によっては、「弔電奉読」が入ることもあります。(たいていの場合は、僧侶退席後に弔電奉読がなされることが多い)。いずれにしても、秉炬や引導には、故人様がこの世で育んだご縁に別れの意を表し、次なる仏の世界へと旅立って行くことを、その場にいる者全員が、しっかりと認識する場であると言えます。そういう意味では、まさに葬儀における最大の山場となる大切な儀式であると言えるでしょう。そのことを踏まえて、秉炬や引導の場に臨みたいものです。