第34回「安位諷経 ―収骨、そして、開蓮忌(初七日)に向けて―」
火葬場で荼毘に付された故人様は、約60〜80分ほどの火葬の後、収骨室にて、ご遺族の方々によって、そのお骨が骨壷にお納めされます。これが「収骨」です。収骨の後、会場を変え(近年は、葬儀会館に戻る場合が多い)、故人様のお骨や、お位牌、遺影をお祀り、再び僧侶が読経供養します。これを「安位諷経」と申します。「安位」とは、お骨を収めることであり、お位牌などと共に仏前に安置することでもあります。
以下は、「安位諷経」おいてお唱えされる回向文です。
上来、諷経する功徳は、新帰元(戒名)に回向す。
冀う所は、安位の次いで、報地を荘厳せんことを。
回向文の形態は先の「送龕回向」とほぼ同じで、違いは、使用されている文言が「安位」という言葉に変わっているくらいです。この回向文は、「安位」の場において、諷経(読経)の功徳を故人様に巡らせ、その成仏を願うことが指し示されています。
そんな安位諷経に引き続いて行われるのが、「開蓮忌法要」です(詳しくはこちらをご覧ください)。開蓮忌は、別名「中陰法要」や「初七日」とも呼ばれます。その起源は儒教における「死者の生還を願い、3日間遺体を安置して、死を確認してからお棺にお納めする」という風習だそうで、明治25年(1892年)に初めて営まれたそうです。
開蓮忌法要の後、「お斎」と申しまして、故人様を偲び、ご遺族の方々と会食をします。しかし、近年は、コロナ禍によって、その習慣が執行できない状況が続いています。私自身、通夜・葬儀を執行させていただくことで、檀信徒の皆様とのご縁を深めるよう努めてまいりましたが、「お斎」の場は、檀信徒の縁者の方々とのご縁を深める場として、欠かせないものでした。宗派の違う方々と仏教の話に花を咲かせたりしながら、仏縁を育ませていただいた頃が、懐かしく思い出されます。
こうした昨今の状況下において、今まで以上に儀式に対する意識を高めていく必要性を感じています。所作の一つ一つを「仏道修行」として捉え、ミスなく、丁寧に行うこと。また、故人を偲び、仏縁を育む通夜説教を必ず執行すること。限られた時間の中で、精一杯、故人様を偲び、ご遺族様に安心をもたらし、仏縁を育むことができるよう、仏と成って儀式に携わる姿勢を持ち続けていきたいと思っています。
そのためにも、日頃の仏道修行が欠かせないことは言うまでもありません。まさに「ただ只管に精進あるのみ!」です。