第16回 「仏弟子証明書 その2―
眞
「衆生仏戒を受くれば、即ち諸仏の位に入る、位大覚に同じゅうし己る、眞に是れ諸仏の子なり」は「修証義第3章・受戒入位」でも登場した一句です。意味内容等、詳細はこちらご覧いただければ幸いです。仏戒(
「南無大慈大悲。哀愍摂受。」―仏の広大無辺なる衆生済度の行に対して、仏弟子が帰依の念を表しています。仏のどんないのちに対しても、その苦しみと向き合い、一つとして取り残すことなく救い上げる「
ここでは、故人様が「戒名」という仏弟子としての御名を導師様から正式にいただきますが、これは、前回の「
そうなりますと、当然、戒名に使われる文字は清らかな文字や、生前の故人の人柄や功績を思い起こさせるような、信仰の対象となるべき文字を使用することになるはずです。
しかしながら、我が宗派始め、仏教教団の歴史の中で、戒名として相応しくない文字を使用した「差別戒名」なる事例が存在していたという事実があります。それは、何の根拠もなく亡き人を不当に差別し、その意識が戒名の授与にまで及ぼされてしまったというものです。
曹洞宗の公式サイトである「曹洞禅ネット」によれば、「差別戒名」は江戸時代中期から昭和20年代頃まで、主に被差別部落の檀信徒に授与されていたとのことで、「畜男(女)」や「穢男(女)」といった直接的な文字を用いた「直接的差別戒名」や、他の地区に住む檀信徒と比して、戒名に用いる文字数を減らすなどの「相対的差別戒名」といった事例が見受けられるとのことです(詳しくはこちらをご覧ください)。
当然ながら、仏のみ教えに従った言動を心がけることを善とし、道から外れた行いを悪とする仏教の立場からいけば、そうした「差別戒名」を授与することが許されるはずはありません。例えば、かわいい我が子が誕生したときのことを思い浮かべてみると、誰が我が子の命名に差別を連想させるような文字を使用するでしょうか―?もはや言うまでもなく、故人様に戒名を授与する際には、過去の歴史を十分に反省して、同じ過ちを犯さないようにすることは勿論、戒名の持つ意味を十分に理解し、未来永劫にわたる信仰の対象として、尊重されていくように配慮していく必要があるのです。
ちなみに、曹洞宗では30年近くに渡り、差別戒名が付された墓石や過去帳などの改正事業が進められ、2016年4月30日時点における差別戒名が付された墓石の改正率は97.2%、過去帳の改正率は94.9%とのことです(曹洞禅ネットより)。100%の改正を目指して、継続的に取り組んでいく重要な課題であることは、言うまでもありません。
戒名に関しては、「