第58回「坐禅の環境・坐禅の条件 その1」

()参禅(さんぜん)も亦坐禅なり、坐禅せんと欲するものは、()浄室宜(じょうしつよろ)し、
菌褥須
(きんにくすべから)
く厚く敷くべし、風烟(ふうえん)をして入らしむること莫れ、
雨露
(うろ)
をして侵さしむること勿れ、膝を()るるの地を護持して、
打坐(たざ)(ところ)を清潔にせよ


「教・行・証の三徳」や「戒・定・慧の三学」を内包する坐禅について、これからは坐禅を行う上での最適な環境や条件に触れられていきます。これらの点について、瑩山禅師様は本編の中でも断片的ではありますが、触れていらっしゃいます。(第40回第42回)また、道元禅師様も「普勧坐禅儀」の中で詳細にご説明なさっています。両祖様がお示しになっている内容は、ほぼ同じで、実践と併せてみれば、比較的、解釈しやすいのではないかという気がいたします。と同時に、それはお釈迦様が成道なさった坐禅がそっくりそのまま伝わってきていることをも意味しているように思えます。

まず、「参禅」という言葉が出てまいります。これも第44回で読み味わわせていただきました。参禅は坐禅そのものであり、内山興正老師のお言葉をお借りするならば、「坐禅に帰依すること」です。ここでは、坐禅のみ教えや方法に自分の照準を合わせることが求められます。それゆえ、自分の考えが入り込む余地などありません。否、むしろ、それを入れようものならば、正確に解釈することさえも困難になってしまうくらいなのです。

そうした「参禅」という観点を以って、瑩山禅師様がお示しになっている坐禅に最適な環境や条件を見ていきますと、最初に「浄室宜し」とありますように、坐禅には静かで清潔、そして、整理整頓が行き届いた環境が大切であることが提示されています。モノが乱雑に置かれている場所だとか、雑音が多い場所、「風烟をして入らしむること莫れ、雨露をして侵さしむること勿れ」とあるように、外から風や煙、雨が入ってくるような破損が甚だしい環境も、「降魔(ごうま)」とあるように、参禅する者の心を乱す原因となるため、不適格であると瑩山禅師様はお示しになっているのです。

次に「菌褥須く厚く敷くべし」とあります。菌はコケのことで、湿地に生える植物で、褥は、“しきぐさ”や“しきわら”のことです。お釈迦様は吉祥草(湿地に生える草)を敷いて坐禅をなさったとのことですが、平坦な場所で坐禅を組んでみると、上手く身体を安定させることが難しいことに気づかされます。ある程度の高さが必要であり、お釈迦様以降の祖師方も、お釈迦様の方法に準じました。ちなみに、今は吉祥草ではなく、「坐蒲(ざふ)」という、円形の座布団を用いています。

そして、「膝を容るるの地を護持して、打坐の処を清潔にせよ」とあります。坐禅における身心の安定や調整には、膝を容れる(しっかりと足を組む)ことが肝心です。自分の根元が安定するから、全身が安定していくのです。そうした重要な自分の根元を清潔にしておくことを心がけておくのも、坐禅の環境を調えていく上での大切な条件の一つなのです。