かや(茅・萱)

屋根を葺くときに使う草の総称を言います。ススキやヨシ、イネワラなどは有名ですが、ササで葺く地方もあります。使用する種類によって屋根の印象はまったく違います。イネワラなどは柔らかい印象になりますし、ヨシなどで葺くと硬い感じになります。また屋根の形によっても印象が違いますので、茅葺き屋根をを見る機会があれば、比べてみるといいでしょう。

茅を育てる

 茅を育てて使うことは、山里や水辺の環境を美しくさせ、役目をはたせば再び土に戻せるので、とても有効な自然資源です。そのため、建物の植物性資材としては、日本はもとよりアジア諸国やヨーロッパなど、世界各地で古くから使われてきました。
 しかも、地球全体に環境破壊が進む近年では、この茅葺き屋根の有用性があらためて見直され、オランダやドイツなどでは茅葺き屋根の家作りに積極的な取り組みもみられています。
茅葺き技術と共同作業

 茅葺き屋根には、伝統的な茅葺き技術があります。棟の形や屋根全体の姿には、それぞれの地域の特徴がみられます。そうした技術は、葺き師の棟梁から若者たちに受け継がれていきました。
 また各地には、屋根葺きや茅場の作業に、住民たちが力を合わせて働く「ユイ」という仕組みもありました。ユイには、そのほかに冠婚葬祭や年行事など、みんなの心のよりどころをつなぐ役目もありました。


茅葺き民家が抱えている問題のひとつとして、茅葺き師の後継者不足があります。しかし「茅のないところに葺き師は育たない」ということで、茅文研では旧江戸村敷地内に茅場を作り、湯涌地区の茅場の復興を目指しています。
 昔は一軒一軒が山の中に茅場を1つは持っていました。平たく開墾がしやすい里の土地は穀物を育てる場として使われるため、農作業には不向きな山間の土地が茅場として使われていました。白川郷などでは刈り取った茅を家の中に保存するほか、「ニュウ」という形で外に保存していますが、湯涌地区では山で刈った茅は近くの木にくくりつけ、ある程度乾燥させてから自分たちの家に運び、雪囲いとして利用し、一冬越してから茅を屋内に保管していたようです。
屋根の葺き替えの際、とても一軒の家が持っている茅場だけでは茅が足りません。葺き替えは15〜20年に一度行われていましたが、集落の中で葺きかえる家にそれぞれの家が茅を持ち寄り、また次の年に別の家が葺きかえる際にはその家に茅を持ち寄っていました。
 湯涌地区ではオガヤとメガヤと呼ばれる2種類の茅があります。茅文研では主にメガヤの茅場の復興をすすめていて、これは金沢市の事業の一環でもあります。メガヤはオガヤに比べて細いため弱い印象を受けますが、茎の中が空洞になっているため、湿度も高く雪も多いこの地方には適した茅だったのでしょう。お隣の世界遺産の登録を受けた五箇山でもメガヤ(呼び名はコガヤ)が使われています。

年に一回行われる茅葺き体験教室にも湯涌で刈り取られた茅が一部使われています。