第63回「仏祖の坐法 その2 ―お釈迦様から道元禅師様、そして、瑩山禅師様へ―

(あるい)結跏趺坐(けっかふざ)し、或は半跏趺坐(はんかふざ)す、
結跏の法は()づ右の足を以つて左の腿(★)の上に置き、
左の足を以つて右の腿の上に置いて、(ゆる)衣物(えもつ)()けて斉整(せいせい)ならしむべし、次に右の手を以つて左の足の上に安じ、
左の手を以つて右の手の上に安じ両手の大指相拄(たいしあいささ)えて身に近づけ、拄指(ちゅうし)対頭(たいとう)、当に(ほぞ)に対して安ずべし、正身端坐(しょうしんたんざ)して左に(そばだ)ち右に傾き、
前に(くぐ)まり、(しり)へに仰ぐことを得ざれ、耳と肩と鼻と臍と必ず(とも)相対(あいたい)し、舌上(したうえ)(あぎと)()け、息は鼻よりも通じ、
唇歯相著
(しんしあいつ)
け、眼は(すべか)らく(まさ)しく開くべし


今回は瑩山禅師様によって「仏祖の坐法」が提示されています。もっとも、これは道元禅師様が「普勧坐禅儀」の中でお示しになった内容とほぼ同じです。詳細は下記の一覧表にてご確認いただければ幸いです。

足の組み方(「結跏趺坐」・「半跏趺坐」) 普勧坐禅儀・第15回 「坐禅の条件 その3 足の組み方」
手の組み方「両手の大指相拄える」ほか) 普勧坐禅儀・第16回 「坐禅の条件 その4 手の組み方」
姿勢(正身端坐 ほか) 普勧坐禅儀・第17回 「坐禅の条件 その5 坐禅中の姿勢」
目線(須らく正しくひらくべし) 普勧坐禅儀・第18回 「坐禅の条件 その6 目の置き方」
呼吸(息は鼻よりも通じ) 普勧坐禅儀・第19回 「坐禅の条件 その7 坐禅中の呼吸」

両者を比較しながら見ていくと、ほとんど相違がないことに気づかされます。これは言うまでもなく、瑩山禅師様が道元禅師様を真似たというよりは、お釈迦様から道元禅師様へと伝わっている「仏祖の坐法」をそっくりそのまま受け継ぎ(相承(そうじょう))、提示なさったことに他なりません。言い換えるならば、時代が変わっても、場所が違えども、お釈迦様から伝わるみ教えが正しいことを道元禅師様も瑩山禅師様も証明なさっているということなのです。

そうした祖師方がお示しになった坐法に従って、姿勢を調えていくと(正身端坐)、自ずと耳と肩、鼻と臍(ヘソ)が、それぞれ一直線上に並び、相対します。最初から耳と肩を相対させようとしても上手くいくものではありません。背筋を伸ばすなどして姿勢を正していく中で、次第に点と点が一直線で結ばれるがごとくに並ぶようになるのです。

こうしたお釈迦様から相承されてきている「仏祖の坐法」に、私たちは一切の私見を交えることなく、そっくりそのまま受け継ぎ、味わっていきたいものです。


★「腿」について
正しくはにくづきに坒という文字が使用されていますが、漢和辞典やパソコン等で検索してみたところ、当該文字が見つからなかったため、それに近い意味を持つ文字で代用させていただきましたことをご報告させていただきます。